研究課題/領域番号 |
25460932
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
渡邉 俊雄 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50336773)
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研究分担者 |
藤原 靖弘 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40285292)
谷川 徹也 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70423879)
富永 和作 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80336768)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細菌叢 / 胃癌 |
研究概要 |
1.正常マウス胃細菌叢と胃酸分泌抑制剤が細菌叢に与える影響の検討。大腸とは異なり胃細菌叢の報告はほとんどなされていないため、まずはHelicobacter pylori (H. pylori)非感染の正常マウス胃における胃細菌叢の検討を行った。マウス胃粘膜をサンプリングして各検体の細菌由来16S リボゾーム(r)DNAの部分塩基配列のTerminal Restriction Fragment Length Polymorphism (T-RFLP)解析を行い、検体中の主要な分類群の推定およびクラスター解析を行った。その結果、デンドログラムによる各個体間のフローラ構造類似性の解析では胃内フローラ構成細菌群集構造に一定の傾向を認め、Lactobacilalles, Bacteroides, Clostridium subcluster XIVaが主たる構成菌種であった。。次に、ヒトにおける解析では各種薬剤の内服の影響が否定できないため、特に胃細菌叢に影響を及ぼす可能性が高い胃酸分泌抑制剤(プロトンポンプ阻害剤:PPI)の投与を行いT-RFLP解析を行った。その結果、PPIの投与により正常マウスとは異なったクラスターを形成する傾向を認め、菌種構成においてはClostridium subclaster XIVの比率が減少していた。 2.ヒト胃細菌叢と胃酸分泌抑制剤が細菌叢に与える影響の検討。内視鏡下生検組織を用いたヒト胃細菌叢の検討を行った。ヒトではLactobacilalles, BacteroidesおよびPrevotellaが主たる菌種であり、マウスとは少し異なった構成を示した。また、マウスと同様にPPI服用者では非服用者とは異なったクラスターを形成していた。 3. H.pylori 除菌後胃癌発症例や胃炎患者において内視鏡下生検を行い、解析検体を集積した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部の検討(臨床検体の集積)を除いて、当初の予定通り概ね進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、次年度は以下の検討を行う予定である。 1.H. pylori感染が胃内フローラに及ぼす影響と除菌後胃癌発症に関与する細菌種の同定。平成25年度の検討において、PPIの内服が胃細菌叢に影響することが判明した。従って、細菌叢の評価はPPI非内服症例を対象にすることが望ましいと考える。H. pylori除菌前後でのフローラ解析、H. pylori陽性胃癌症例(1次癌)と除菌後胃癌症例(2次癌)におけるフローラ解析を行い、胃炎進展や1次発癌と2次発癌の責任細菌種が同一のものか否かを検討する。 2.H. pylori感染胃炎マウスおよび胃癌発症マウスを用いた検討。 1) H. pylori (シドニー株)感染胃炎マウスおよびH. pylori感染胃癌発症マウスをメタゲノム解析して、胃炎の進展や胃癌発症に伴う胃内フローラの変化を検討し、臨床検体で得られた結果との異同を評価する。また、一部のマウスに対してはH. pylori除菌を施し、除菌後の胃内フローラの変化についても検討を加える。なお、胃癌発症マウスは発癌物質であるN-methyl-N-nitrosourea (MNU) 200 ppmを隔週で計5週間自由飲水させた後にH. pylori(シドニー株)を感染させて作成する。 2)臨床検体を用いた解析で胃炎の進展や除菌後胃癌発症との関連が示唆された候補菌をATCCなどから購入し、正常マウス、H. pylori感染マウスあるいはH. pylori感染胃癌発症マウスに培養菌液を投与する。菌液の投与間隔はマウス胃内での生息細菌数が常に一定数以上となるように設定する。また、平成27年度の予備実験として菌液投与時の胃粘膜における好中球や単核球浸潤や炎症性サイトカインなどの遺伝子発現を検討する。
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