研究実績の概要 |
通常内視鏡検査時に廃棄される胃洗浄廃液から回収・解析したDNA異常を胃がんの分子マーカーとして臨床応用することが本研究の目的である。既に廃液である胃洗浄廃液を用いたDNA異常解析が従来の弱みである「見逃し」の解消につなげることが出来るほか、存在診断・予測診断にも応用可能であることを米国Gastroenterology誌に報告した(特許申請)。さらに本研究では「解析時間短縮・効率的なDNA抽出・コスト削減」の課題に注目し、胃洗浄廃液から目的遺伝子を増幅する過程の簡素化・低コスト化にも注目し、研究・検証を行うものである。当初のアイディアである従来のDNA抽出法を行わずに直接PCR増幅させる方法を試みたが、胃洗浄廃液検体のコンディションにより抽出可能なDNAの量・質にバラツキが発生しえる問題から、DNA抽出は行うものの短時間に定量的遺伝子解析を実現できるPyrosequencing法を採用、良好な結果を得ることができ、2015年4月に米国癌学会(フィラデルフィア)にて、また翌月の5月には米国消化器病週間(ワシントンDC)にて発表した。さらに本年度「エピゲノム解析を応用した超早期胃がん診断の開発と実用化」を目的とした前向き臨床試験が終了し、解析の結果、Sox17,miR34,MINT25の3遺伝子メチル化異常が超早期胃がんを捉えることの子出来る候補遺伝子として選定され、それぞれの感度・特異度・AUC(Area Under the Curve)は、Sox17(70.0%,48.1%,0.646)、MINT25(70.0%,35.2%,0.555)、miR34(65.0%,49.4%,0.578)の結果を得ることができ、米国癌学会(ニューオリンズ)および米国消化器病週間(サンディエゴ)にて発表とした。さらに、得られたDNAにはH.Pyloriが混在しており、H.Pyloriの含有を簡便に遺伝子レベルで同定できるだけでなく、Pylori菌種の複数混在および薬剤耐性株の混在比を解析可能であることをつきとめ、今後の継続研究につなげる予定である。
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