研究課題/領域番号 |
25460938
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
福井 寿朗 関西医科大学, 医学部, 講師 (60402905)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 食道 / 癌幹細胞 / Smad蛋白 |
研究概要 |
本研究責任者は、胃・小腸・大腸上皮における幹細胞マーカーとしてリンカー部スレオニンリン酸化Smad2/3蛋白(pSmad2/3L-Thr)を同定し動態を明らかにしてきた。この成果を発展させ、実用的マーカーの存在しない食道にても幹細胞マーカーになり得るかどうかを検討した。また、消化管粘膜の再生・癌幹細胞・癌化のメカニズムにおけるpSmad2/3L-Thrの役割を解析するため大腸癌モデルマウス等を作製した。 (1)マウス食道にてpSmad2/3L-Thr陽性細胞は粘膜基底層にKi67陽性細胞に挟まれるように検出された。免疫染色後の切片をそのままHE染色することによりpSmad2/3L-Thr陽性細胞は特定の分化の特徴を示さない未熟な細胞として基底層に確認された。 (2)pSmad2/3L-Thr陽性細胞は基底層の未熟扁平上皮細胞マーカーであるp63、基底層の上皮細胞が発現するサイトケラチン14(CK14)の両者とも陽性であり、未熟な基底層上皮細胞であることが確認された。 (3)pSmad2/3L-Thr陽性細胞はリン酸化に関与すると考えられるCDK4を強く発現していた。 (4)pSmad2/3L-Thr陽性細胞が分裂サイクルの遅い幹細胞であることを確認するため、BrdU label-retaining assayを行った。摘出したマウス食道においてBrdU投与終了後20日までpSmad2/3L-Thr陽性細胞にBrdUの残存が確認された。 (5)塩酸を経口投与し食道潰瘍モデルマウスを作成、投与3日後に食道を摘出した。再生粘膜においてpSmad2/3L-Thr陽性細胞はKi67陽性細胞とともに増加していた。 (6)次年度以降の研究のため、アゾキシメタン(AOM)/DSS投与ICRマウス、およびAPC Min/+マウスの消化管に腫瘍ができていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、食道粘膜におけるpSmad2/3L-Thrの発現を検討することが出来た。食道粘膜においてもpSmad2/3L-Thrは幹細胞マーカになりうると考えられた。 次年度以降の研究の準備段階として、消化管腫瘍モデルマウスを二種類作成し、今後の研究の準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
新たに提唱された幹細胞マーカーや実験手法を適宜取り入れ、pSmad2/3L-Thrの幹細胞マーカーとしての有用性の確認を繰り返し行い、幹細胞におけるpSmad2/3L-Thrの働きのメカニズムを解析して行く。 また癌組織におけるpSmad2/3L-Thrの発現を検討することにより、癌幹細胞マーカーとしての可能性の検討、発癌メカニズムや治療としての応用の可能性を今後検討して行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
抗体等の試薬を可能な限り希釈して使用し、より少ない消費を心がけたため購入する試薬の量を当初の予定よりも減らすことが出来た。また試薬購入や切片作成業者を選定することによって、より安く試薬等を購入することが出来たため。 今後も試薬の節約に努めるが、試薬は使用期限が決まっており、残余があっても新しい試薬を一定期間内に購入する必要があるため試薬購入資金に充てる。
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