研究課題
消化管粘膜には上皮幹細胞が存在し、恒常性・再生・癌化のメカニズムに重要な役割を担っている。我々は幹細胞・細胞周期研究や疾患モデルマウスの知見を応用し、胃・小腸・大腸上皮における新規幹細胞マーカーとしてpSmad2/3L-Thr を同定し動態を明らかにした。この研究成果を発展させ、実用的マーカーの存在しない食道にてpSmad2/3L-Thr が幹細胞マーカーになり得るかどうかを検討した。また大腸癌モデルマウス等を作製し、pSmad2/3L-Thr 陽性細胞を検討することにより癌幹細胞・癌化のメカニズムを解析している。・前年度までに解析した実験結果より、食道粘膜においてもpSmad2/3L-Thrが幹細胞マーカーになることを確認した。この結果を英語論文化し、Diseases of the Esophagus誌にて発表した。・これまでの小腸、大腸におけるpSmad2/3L-Thr関連実験の結果にて、pSmad2/3L-Thrが小腸、大腸粘膜における幹細胞マーカーになることを英語論文化し、Digestive Diseases and Sciences誌にて発表した。・前年度から作成し始めたAOM/DSS 大腸癌モデルマウス検体を採取した。大腸炎を伴う粘膜内に、多発性の隆起性病変が出来ており、病理学的にはほとんどの病変が粘膜内癌であった。一部は漿膜下層に病変が浸潤していた。病変は時間経過とともに腫瘍の個数が増し、サイズも大きくなっていた。・リン酸化Smad蛋白やCDK4・Ki67・βカテニン・Sox9・cyclin D1・c-Myc等の免疫染色にて癌部(および正常部)における発現を(比較)検討した。pSmad2/3L-Thr陽性細胞の癌幹細胞としての可能性が示唆され、(炎症性腸疾患からの)発癌メカニズムにSmadリンカー部のリン酸化が早期から関与していることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
・pSmad2/3L-Thr陽性細胞が当初の予想通り、食道上皮幹細胞マーカーとして有用であることが確認され、それを論文化し、発表することができた。・大腸癌モデルマウス作成に成功し、腫瘍におけるpSmad2/3L-Thr陽性細胞は、腫瘍幹細胞と推定されること、また(腸炎関連)大腸癌の発生には早期からSmad蛋白のリン酸化部位がC末端からリンカー部に変化していることを確認できた。今後論文化し発表の予定である。・実験結果をさらに追加し、小腸、大腸においてpSmad2/3L-Thr陽性細胞が幹細胞と考えられることを論文化し発表することができた。
・ヒト大腸腫瘍組織においてpSmad2/3L-Thr発現とSmad蛋白のリン酸化部位を解析することによって、モデルマウスと同じ戦略で腫瘍幹細胞、腫瘍化のメカニズムについて研究を続ける。・可能であればその他の消化器系の腫瘍についても同じ方法で解析する。
試薬の節約に心がけ、より少ない消費を心がけたため試薬購入費用が減少したため。
パラフィン標本切片作成費用に使用する予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件)
Digestive Diseases and Sciences.
巻: 60 ページ: 362-374
10.1007/s10620-014-3348-3.
Diseases of the Esophagus.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/dote.12277.