研究実績の概要 |
タイト結合は,細胞間のバリア機能や細胞極性の維持に不可欠なものであり,極性のある上皮細胞の管腔内腔側細胞表面に局在している.このタイト結合を担う細胞表面表出蛋白には,クローディン(CLDN),オクルーディン,JAMがあり,裏打ち蛋白としてZO-1, ZO-2, ZO-3などがある.またバリア機能の構成には,CLDNが最も重要な役割をしていると考えられている.CLDNには少なくとも27のサブタイプが存在し,これらサブタイプは,組織特異的に発現し,臓器によって発現しているサブタイプが異なる. 本研究では,内視鏡下生検組織を用いてタイト結合蛋白の発現を蛍光免疫組織染色で確認し,その発現程度をreal-time PCRで定量化した. 十二指腸粘膜上皮にはCLDN1, CLDN2, CLDN3, CLDN4, CLDN7,CLDN8, CLDN-15, CLDN18, JAM-A, Nectin-1, Nectin-3, ZO-1, ZO-3の発現を認め,それぞれの発現は,機能性ディスペプシア(FD)患者での発現パターンが異なることが明らかとなった.FD患者における十二指腸粘膜は肉眼的に正常であり,内視鏡的な観察のみでは困難である微細な変化をとらえていると考えられる. またFD患者では好酸球と肥満細胞浸潤が増加していたが,H. pylori感染との関連は明らかでなかった. ディスペプシア症状の一つである胸やけを訴える非びらん性胃食道逆流症(NERD)患者の食道粘膜において,IL-33の発現が上昇していることやIL-8などの炎症性サイトカインとの相関を明らかとした.
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