研究課題
これまで未知の領域であるヒト小腸に関して、バルーン内視鏡はライブでの生理的な環境下における観察だけでなく、生検による上皮細胞、間質、腸内細菌を含めた小腸環境を反映した検体の採取が可能となった。そこで本研究では、これまで申請者らが解析を行ってきたヒト小腸全長における腸管上皮細胞の組成制御・機能制御をさらに発展させ、クローン病における全小腸内の上皮細胞構成、腸内細菌叢を部位別に解析を行いクローン病における小腸内環境を理解し、最終的には本邦クローン病における病態を抽出し治療の標的を集約させることである。またその補助としてヒト小腸組織の培養のおけるex vivoの小腸上皮機能、幹細胞機能評価を確立し消化管機能スクリーニング法を開発することを目的としている。本年度は研究計画に則り、バルーン内視鏡によりクローン病全小腸からマッピング生検を施行し、上皮細胞の免疫染色による細胞組成、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行い部位別の細胞制御機構を解析した。その結果、空腸側では炎症関連遺伝子の発現は認め無い一方で、回腸では非病変部においても炎症関連遺伝子の発現上昇を認めたことから、潜在的炎症は回腸全域に波及していることが示唆された。興味深いことに炎症の波及していない空腸側においても抗菌物質の一つであるHD-6産生低下を認めたことから、消化管バリア能の低下がクローン病においても示唆された。さらにHD-6の発現制御解析を行い、βカテニンとAtoh1が協調して転写活性を制御することを見出した。
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Inflamm Bowel Dis.
巻: 22 ページ: 1119-1128
10.1097/MIB.0000000000000707.