研究分担者 |
後藤 秀実 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10215501)
前田 修 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (20378053)
渡辺 修 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (80378059)
尾崎 信暁 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 特任教授 (70378082) [辞退]
大宮 直木 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (00335035)
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研究実績の概要 |
腸管のL細胞から分泌されるGLP-2は、腸管粘膜の上皮細胞のターンオーバーを促進し粘膜創傷治癒や粘膜障壁機能を高め、アポトーシスによる細胞死を阻害するため、腸炎からの治癒を促進すると考えられている。GLP-2が欠損する状況での腸炎の回復過程を検討した。GFP(green fluorescent protein)がpro-Glucagon領域にノックインされたGLP-2を含むproglucagon derived peptides (PGDPs)欠損マウスを使用した。PGDPs-/-マウスに正常なGLP-1、GLP-2が発現しないことを確認し、10-12週齢のオスのPGDPs-/-マウスとPGDPs+/+マウスに、3.0%のDSS(dextran sodium sulfate)を6日間投与し、体重減少、臨床活動度を計測した。投与開始後9日目(DSS投与終了後3日目)において、2群間に体重減少及びDAIスコアには有意な差は見られなかった(PGDPs-/- group, BW -15.9±4.4%, DAI 3.8±1.8; PGDPs+/+group, BW -14.9±3.8%, DAI 4.1±3.3; NS)。10-24日目においては、PGDPs-/-群の体重はGcg+/+群より1.0-5.1%程低値であったが、有意ではなかった。さらに、投与開始後7日目と、21日目におけるマウスの腸管を組織学的に検討したところ、腸管絨毛の高さと、腺窩の深さにおいて、PGDPs-/-マウスとPGDPs+/+マウスの間に差は見られなかった。以上のことより、GLP-2が欠損している状況において、腸炎の回復過程が完全に阻害されることはなく、治癒が遅延する傾向がみられる程度との結論に至った。GLP-2というインクレチンは、作用増強により腸炎の回復を早める効果はあるが、回復に必須のものではない。
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