研究課題
基盤研究(C)
EGFP-transgenic miceから分離した骨髄細胞5 x 10e6個を10 Gy放射線照射後のC57BL/6J miceの尾静脈から移植して骨髄再構築を施行し、移植後2ヶ月以上経過してから、このマウスにAOM/DSSを投与して大腸炎後に大腸癌を発症するモデルを作成した。投与するDSSの濃度により、マウスは早期死亡を来たし、最終的には1% DSSを7日間投与後distilled waterを2週間投与するのを1サイクルとして3サイクル実施し、3サイクル終了後12週まで観察した。1% DSS投与中には下痢・下血が見られ、体重も平均10-15%減少した。3サイクル終了後5週目では腫瘍の形成は認められなかったが、8週目では肛門側に腫瘍形成が認められ(これまでの報告通り、上行結腸にはほとんど腫瘍形成はなく、下行結腸から直腸に集中していた)、12週目では腫瘍の数および大きさが増大していた。また、大腸の長さは傷害に伴い短縮することも確認された。大腸のH-E標本では、大腸粘膜下に多数の炎症細胞浸潤が認められた。大腸の凍結切片を作成し、抗CD45抗体で反応後、Alexa-Fluor568二次抗体で染色し、TOPRO3にて核染色を行い、confocal lazer microscopyにて観察した。腸粘膜下に多数のEGFP陽性細胞を認め、一部の細胞では白血球抗原であるCD45が陰性であった。
2: おおむね順調に進展している
EGFP-transgenic mice由来の全骨髄細胞(造血細胞以外に間葉系細胞や組織幹細胞を含む)を移植した骨髄キメラマウスを用いて、AOM/DSSモデルを作成できたが、まだ、造血幹細胞のみ(100個のEGFP+lineage-c-kit+Sca-1+CD34-細胞)を移植したマウスが作成できていない。AOM/DSSモデルを骨髄キメラマウスに適用するに当たり、これまでに非移植マウスで報告されていたDSS濃度(2-3%)では短期間に死亡するため、大腸腫瘍形成の過程を観察することが出来ず、その濃度決定に時間を要した。最終的には1% DSSであれば、概ね80%のマウスで長期観察が可能であることが判明した。この濃度決定実験に時間を要してしまい、造血幹細胞移植マウスの作成まで手が回らなかった。
EGFP-transgenic miceから分離した全骨髄細胞を移植して作成した骨髄キメラマウスを用いてAOM/DSS傷害を与えるが、その際に、降圧薬として使用されているangiotensin II type 1 receptor blocker (ARB)を投与することにより、大腸の炎症や腫瘍形成がどのように変化するかを観察する。ARB投与群と非投与群で、大腸粘膜下に出現する細胞の差異に関して検討を加える。上記研究を進めながら、造血幹細胞を用いた骨髄キメラマウスも作成する。
抗体などの物品が予定していた価格よりも若干安く購入できたことによる。翌年度の物品費と併せて使用する。
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