研究課題
EGFP-transgenic miceから分離した全骨髄細胞5 x 10e6個を10 Gy放射線照射後のC57BL/6J miceの尾静脈から移植して骨髄キメラマウスを作成。移植後2ヶ月以上経過してからAOM/DSS(1% DSSを含む水を7日間投与後2週間蒸留水を投与することを1サイクルとして3サイクル実施)傷害を与えるモデルを用いて、降圧薬として使用されているangiotensin II type 1 receptor blocker (ARB)を投与することにより、大腸の炎症や腫瘍形成がどのように変化するのかを観察した。ARB投与群では、1%DSSによる傷害開始時から3サイクル投与終了後12週目までの全観察期間にわたりARBを投与した。そして、臓器を摘出して大腸の長さ、腸管内腫瘍の数とサイズをARB非投与群のマウスと比較検討した。ARB投与群では1%DSS投与1サイクル目の体重減少は非投与群より軽度であったが、2サイクル目以降は非投与群より有意に体重が減少した。しかしながら、大腸長の短縮はARB投与群が非投与群に比して軽度であった。また、直腸領域に発生する腫瘍(腫瘍はほとんど直腸に発生した)の数も非投与群に比して少なかったが、出現した腫瘍のサイズにはあまり差違は無かった。AOM/DSS傷害後の腸管の粘膜下層には血液細胞由来(EGFP陽性)でありながらCD45抗原が陰性の細胞が出現することがこれまでの解析から判明していた。この細胞はcollagen Iやα-smooth muscle actinが発現することから線維芽細胞および筋線維芽細胞であると推測された。これらの細胞はARB投与により減少することが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
AOM/DSSにより引き起こされる大腸線維化(大腸長の短縮で判断しただけで、まだSirius red染色などでは確認できていない)や大腸腫瘍の形成に及ぼすARBの抑制効果は確認できたが、炎症部位に存在する細胞の詳細な解析はまだ不十分である。炎症部位へはchemokineなどの液性因子の関与が推測されており、ARB投与群と非投与群でのマウス血漿が保存できているがこれに関してもまだ解析できていない。
AOM/DSS傷害マウスの粘膜下組織に存在するEGFP陽性細胞に注目して、ARB投与群と非投与群を比較するとCD45陰性細胞の減少が認められたが、CD45陽性細胞ではどの分画(リンパ球、好中球、単球/マクロファージ)の細胞に変化があるのかは十分検討出来ていないので、詳細な細胞分画の解析を行う。その際には、組織学的な解析に加え、大腸粘膜下細胞を分離してFACS解析も行う。また、分離保存してあるマウス血漿の解析から、どのような液性因子(chemokine中心に)が末梢血から傷害腸管への血液細胞侵入に影響するのかを検討する。さらに、tenascin CがchemokineであるMCP-1のregulatorとの報告があるので、EGFP miceから分離した全骨髄細胞を移植したtenascin C knockout miceを解析する。これらの解析結果をまとめることにより傷害腸管への血液細胞浸潤に関与する因子を明らかにする。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件)
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