研究課題
本研究の主目的は大腸発癌の主要な分子機構と位置づけられてきた染色体不安定性の原因となる新規遺伝子を同定することであった。早期癌と腺腫が共存する前癌病変に着目し、早期癌部分のコピー数変化と腺腫部分の遺伝子変異プロファイルを比較することにより、発癌・進展予測が可能なバイオマーカーを抽出する予定であった。更に、拡大内視鏡像などの臨床病理学的因子との対比を行い、腺腫の段階での臨床所見による発癌・進展の予測可能性の検討を行う予定としていた。しかし、実際のところ、質の高い臨床検体(腺腫内癌)の確保が困難となり、Comparative genomic hybridization (CGH)アレイ法などの解析を十分行い得なかった。また、全エクソンシークエンス解析を行う予定としていたが、検体確保とコストの問題があり、こちらも行い得なかった。そのため、研究対象を変更し、ある特定の遺伝子変異を伴う大腸前癌病変(鋸歯状病変)において、遺伝子メチル化の解析と、臨床病理学的因子との関連の検討を行った。結果、遺伝子メチル化の多寡と腫瘍の局在に強い関連があることを見出した。それにより、S状結腸より近位に存在する鋸歯状病変は発癌可能性が高いため、治療が望ましいことが明らかとなった。さらに、鋸歯状病変の背景粘膜において、部位ごとの遺伝子メチル化の差がないことを見出し、鋸歯状病変には領域がん化(field cancerization)の関与が乏しいことを確認した。それらの結果を欧州消化器病週間、日本癌学会などで発表し、Oncotaget誌に報告した。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Oncotarget
巻: 7 ページ: 35106-35108
10.18632/oncotarget.9044.