抗TNFα抗体療法はIBD治療の根底を変えたが、無効例の存在などが問題になりつつある。申請者らは、最近、II型膜蛋白(C末が細胞外)である前駆体からTNF-αを産生するADAM17(TNF-α転換酵素;TACE)は、I型膜蛋白(N末が細胞外)のEGFリガンドをも切り出す不思議な事実に注目し、ADAM17のTACE活性には、介在蛋白としてAnnexin(ANX) A2が必要であることを見出した。本研究では、ANX A2の阻害はTNFα産生を減らし、EGFリガンド産生を増やす事実を、ANX A2ノックアウトマウスで検証する。そのために、まずANX A2ノックアウトマウス作製し、実験腸炎マウスモデルにてANX A2阻害の抗炎症効果を検討したい。ANX A2ノックアウトES細胞をEUCOMM から購入後、細胞培養X A2ノックアウトES細胞の数を増やし、胚盤胞にインジェクションし、偽妊娠C57Bl/6雌マウス子宮に移入し、キメラマウスを得た。さらに交配させ、ヘテロマウスを作製しようとしたが、妊孕性がなく得ることができなかった。キメラマウスを屠殺、解剖すると、精巣や子宮付属器の発育が非常に悪く、さらに交配し、ヘテロマウスを得るには不可能な生殖器の発育不良の状態であった。ANX A2は、生殖器発育にかかわる遺伝子だということが明らかになった。 次に、ANX A2がIBD患者において疾患活動性バイオマーカーとしての有用性を検討する。血清中、尿中ANX A2測定系を構築するため、質量分析を利用しての測定系構築。共同研究者である愛媛大学東山教室でコムギ胚芽無細胞蛋白質合成法を利用した試験管内蛋白質合成システムで、ANX A2リコンビナント蛋白を合成後、ANX A2を特異的に検出できる10種のペプチドを決定した。今後、IBD患者において疾患活動性バイオマーカーとしての可能性を検討していく。
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