研究課題
わが国の大腸癌罹患率は急増しており、早期診断・治療に加え、大腸癌予防に向けた取り組みは緊喫の臨床的課題である。これまでの大腸癌バイオマーカー研究により、糖尿病、酸化ストレスで増加するメチルグリオキザールにより翻訳後修飾を受けた熱ショック蛋白質27(Hsp27)ならびに日常的運動により骨格筋から分泌され、大腸癌抑制に作用するマイオカインSPARCを世界で初めて同定した。これら2つのシーズ(修飾Hsp27とSPARC)を基盤に、これら蛋白質の大腸発癌に作用する分子機構解析を進め、大腸癌早期診断ならびに予防戦略に有用なバイオマーカーの確立を目指した研究を3年間に実施し、以下の成果を得た。1)MG修飾Hsp27蛋白質と SPARC蛋白質の細胞生物学的意義:Hsp27とMG修飾Hsp27、リン酸化Hsp27の導入細胞を確立し、細胞内マトリックスとの反応ではMG修飾Hsp27はアクチンと結合し、がん細胞の流動的遊走能に影響することを明らかにした。2)大腸癌微小環境におけるHsp27蛋白質と SPARC蛋白質の相互作用:アゾキシメタン+DSS腸炎を作製し、炎症発癌モデルを作製した。癌微小環境の評価のため、炎症関連遺伝子(IL-1β、TNFα、iNOSなど)、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT1、DNMT2など)、腫瘍抑制遺伝子の発現を評価し、MG修飾Hsp27蛋白質量、SPARC蛋白質量と比較し、SPARC蛋白質が大腸癌発生に抑制的に作用することを明らかにした。3)臨床検体を用いたMG修飾Hsp27蛋白質、SPARC蛋白質の予防・診断マーカーとしての意義の検討:大腸内視鏡を受けた患者の保存血清検体を持ちいて、SPARC蛋白質の血中濃度を測定したが、一定の傾向は見られなかった。
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