研究課題
基盤研究(C)
HO-1(heme oxygenase-1)/CO(carbon monoxide:一酸化炭素) 系の腸管炎症病態における役割、さらには、新規治療分子としての可能性を検証する研究の一環として、本年度は炎症粘膜におけるHO-1発現挙動について検討を行った。ヒト潰瘍性大腸炎手術検体やマウス大腸炎モデルにおける炎症大腸粘膜では、正常大腸粘膜に比較してHO-1発現が亢進することを確認し、その局在は主に粘膜内に浸潤したマクロファージ(Macrophage: Mph)に認められることを明らかにした。これまでの知見から、HO-1が腸管粘膜内Th1/Th2サイトカンバランスを制御すること、腸炎の発症・進展とともに大腸粘膜内に発現亢進するHO-1が大腸粘膜保護作用を示すことから、HO-1を高発現するBach1欠損マウス由来腹腔単離MphやRaw細胞株にHO-1誘導剤刺激により作成したHO-1高発現Mphを用いて検討したところ、TNF-alphaやLPS刺激による炎症性サイトカイン産生が抑制されることが明らかとなった。さらに、これらのHO-1高発現MphはArginase-1、Mannose receptor、Fizz-1、Ym-1などのM2マーカーを高発現しており、抗炎症性Mphとしての形質を有することが明らかとなった。HO-1を治療標的分子とした腸管炎症制御の検証もあわせて行っており、アガロオリゴ糖によるHO-1高発現Mph誘導能を見出し、アゴロオリゴ糖の投与により小腸・大腸炎症を制御できること、また、Bach1欠損マウス由来HO-1高発現Mphを移入することにより大腸炎発症・進展が抑制できることを明らかにした。
3: やや遅れている
概ね当初計画通りに進行しているが、HO-1発現細胞の局在が腸管内マクロファージ(Macrophage: Mph)に主に認められることは検証できているが、HO-1陽性・陰性発現Mph細胞比率に関しては免疫染色、FACS解析を用いて確認する必要があり、現在、条件設定中である。また、HO-1高発現MphのM2マーカー、サイトカイン産生能に関しても検証をすすめており、貪食能等の詳細なMph機能は今後解析の予定である。一方、次年度以降の研究計画4「HO-1高発現Mphを用いた細胞治療の可能性の検証」に関しては、Bach1欠損マウス由来HO-1高発現Mphを移入することにより大腸炎発症・進展が抑制できることを明らかにすることが出来ており、先行して取り組みを進めることが出来た。
本年度の達成が不十分となった計画のうち、腸管粘膜から単離したマクロファージ(Macrophage: Mph)の解析を中心に進めていく予定である。単離作業中の刺激により、本来、HO-1低発現と思われるMphもHO-1を高発現している可能性があり、実験技術的に改良の余地があると考えられる。また、当初計画案には盛り込まれていないが、骨髄単球由来MphにおけるM1/M2分化に伴うHO-1発現挙動についても解析を予定している。一方、今年度は研究計画3で予定している「HO-1高発現Mphによる腸内細菌認識機構の変化とそれに基づく腸管内細菌叢変容の解析」についてHO-1を高発現するBach1欠損マウスと野生型マウスでの比較を中心に検討を進めていく予定である。
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