研究課題
基盤研究(C)
本研究では、腸管マクロファージにおけるエピジェネティックなサイトカイン産生制御機構に着目し、ヒト炎症性腸疾患患者腸管マクロファージのエピゲノム異常について、ハイスループット次世代シークエンシングを用いて網羅的に解析する予定である。同時に既にマウスを用いたin vitro実験において抗炎症効果を確認しているヒストン脱アセチル化酵素阻害薬を副作用なく効果的に投与するために、ナノテクノロジーを利用した画期的DDSを併用することで、エピゲノム分野の知見を臨床に応用することを試みる。FAIRE-seq(Formaldehyde-Assisted Isolation of Regulatory Elements combined with high-throughput sequencing)は、ゲノム上のクロマチン構造を網羅的にシークエンスし、euchromatin=活性の高い部位をマッピングする方法であり、共同研究先のCarolina Center for Genome Sciencesで開発された方法である。今回、IBD患者ならびに非IBD患者の外科生検検体をFAIRE-seqした。74個のIBD関連SNPsがopen chromatinの部位に存在した。IBD関連SNPは、クローン病患者組織中のopen chromatin部位にに有意に増加していた。対照的に、IBDに関連しないSNPについてはそのような現象は見られなかった。また、腸管を含めたヒトの種々の臓器をFAIRE-seqで解析したところ、腸管に特異的なregulatory elementsが見出された。
3: やや遅れている
腸管マクロファージ特異的エピゲノム制御の同定については概ね順調に進捗している。HDAC阻害剤を用いたエピゲノムの臨床応用について、当初MS275をターゲットとしてナノ粒子化を試みたが、技術的に困難であったため、他のHDAC阻害剤に変更、現在はその骨髄由来マクロファージにおける炎症性サイトカイン抑制能をスクリーニング中である。
腸管マクロファージ特異的エピゲノム制御の同定については、マクロファージ、T細胞、上皮細胞それぞれの分画をFAIRE-seqし比較することを行っている。また、そのゲノム配列とエピゲノム情報を比較しその相関性を検討していく予定である。HDAC阻害剤を用いたエピゲノムの臨床応用については、骨髄由来マクロファージにおける炎症性サイトカイン抑制能の強いものを選択し、ナノ粒子化を進めていく。
HDAC阻害剤MS275のナノ粒子化が不成功であったため、製剤を使用したin vitro, i vivoの実験の施行が不可能であった。2014年度に他のHDAC阻害剤のスクリーニングとナノ粒子製剤化、in vitroならびにin vivoの研究を行っていく予定であり、既に開始している。
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