研究課題
腸管マクロファージのエピジェネティック制御を明らかにする試みを行っている。具体的には正常・炎症性腸疾患の腸管マクロファージそれぞれのエピゲノムプロファイリングを①FAIRE-seq②ChIP-seq③RNA-seq、を利用して明らかにする試みを行っている。まず組織のFAIRE-seqよって、ヒト腸管組織では、他臓器とは異なるエピジェネティックな変化をきたしていることが判明した。また、疾患感受性遺伝子のひとつSBNO2((Strawberry notch homolog 2):rs2024092ははヒト 粘膜固有層CD33+マクロファージのオープンクロマチン部位に存在するということが分かり、興味深い知見と思われた。本研究ではさらにこのエピゲノム研究の臨床応用を目指し、HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)阻害剤を基材としたナノ粒子製剤の制作を試みている。はじめにHDAC阻害剤のMS275のIL-12p40抑制効果に着目したが、そのナノ粒子化が技術上困難であったため、他のHDAC阻害剤(Belinostat、Panovinostat、Mocetinostat、Panovinostat、Volinostat)についてまず骨髄由来マクロファージにおける有用性を検討した。サイトカインIL-12p40産生抑制効果は,Belinostatでもっとも有効であった。急性DSS腸炎モデルにおいてナノ粒子化Belinostatは急性DSS腸炎に対して有効な傾向を認めており,現在追試を行っている。
3: やや遅れている
腸管マクロファージの研究に進む前にまず組織レベルでのエピジェネティクス制御の研究を優先していること、メガデータの解析に時間を要することから、ヒト腸管マクロファージ、特に炎症性腸疾患特異的変化を十分に解析する段階に至っていない。また、MS275のIBDにおける治療応用を目指し研究を開始したが、そのナノ粒子化が技術上困難であったため、他のHDAC阻害剤について検討することとした。構造式からナノ粒子化の可能性を慎重に検討しなおした上で、他のHDAC阻害剤Belinostat、Panovinostat、Mocetinostat、Panovinostat、Volinostatについてまず骨髄由来マクロファージにおける有用性を検討することからやり直し、慎重にすすめている。
ヒト腸管マクロファージ、特に炎症性腸疾患特異的変化を十分に解析する段階に至っていないものの、腸管組織特異的な変化を見出すことはそれ自体に重要であり、またマクロファージ特異的、炎症性腸疾患マクロファージ特異的制御機構を解析する前に十分な知見を得ておくことは必要と考えるため、慎重に研究を進めていく。HDAC阻害剤についてはBelinostatのナノ粒子化には成功し、急性・慢性DSS腸炎モデル、もしくはナイーブT細胞移入モデルにおける有用性を検討していく。既にもうひとつPanovinostatについてもナノ粒子化に成功しつつある。本薬剤は米国にて多発性骨髄腫に対する使用認可がされ、ヒトへの使用が現実化された。そのため副作用を減じうるナノ化panovinostatは、炎症性腸疾患についての臨床応用も現実的であり、その開発を進める予定である。
今回はじめにHDAC阻害剤のMS275のIL-12p40抑制効果に着目し、MS275のIBDにおける治療応用を目指し研究を開始したが、そのナノ粒子化が技術上困難であったため、他のHDAC阻害剤について検討することとした。このことが2013年度の研究の遅れをきたしたことが大きな要因である。
現在は他のHDAC阻害剤、特にBelinostatとpanovinostatのナノ粒子化が進展したため、残りの期間で腸炎モデルにおける有用性を確認する際に使用予定である。
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