研究概要 |
本研究は、大腸癌細胞においてその細胞接着、columnar morphogenesis、浸潤、転移の抑制作用を担うホメオボックス転写因子Cdx2の分子機構を解明し、通常であれば根治不能な大腸癌stageIVの治療戦略に応用することを目的とする。FACS、生化学的手法を駆使しながら化学療法抵抗性大腸癌を効率的に抽出し、大腸癌細胞のシグナル伝達過程にかかわる遺伝子群の中で、後天的治療抵抗性克服のために有効な標的分子を同定し、RNA Interference (RNAi) による抑制効果を検討し、新たな創薬への応用を目指す。Cdxが受容体型チロシンキナーゼあるいは非受容体型チロシンキナーゼに影響し、β-catenin、p120-cateninおよびE-cadherinの機能を抑制し、癌の浸潤・転移を抑えると仮説した。まずABCトランスポーターを高いレベルで発現し、様々な細胞障害性を有する薬剤に耐性を示すside population cell(SP細胞)やALDH発現化学療法抵抗性大腸癌をFACS、ALDEFLUORアッセイ、生化学的手法を駆使しながら効率的に抽出する。続いて大腸癌細胞のシグナル伝達過程にかかわる遺伝子群の中で、後天的治療抵抗性克服のために有効な標的分子を同定し、RNA Interference (RNAi) による抑制効果を検討し、新たな創薬への応用を目指す。特に化学療法抵抗性大腸癌における細胞接着関連タンパクの破綻のメカニズム、ホメオボックス転写因子CDX2を介した細胞の再分化および浸潤・転移の抑制をEGF, IGF, c-METのリン酸化に着目し、研究を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まずヒト大腸癌細胞株10種(Colo201, Colo205, LoVo, DLD-1, HCT15, Colo320DM, HT29, HT29N2, CaCO2, T84, )の大腸癌細胞株の細胞接着関連タンパク質の発現および遺伝子変異の解析とチロシンキナーゼ、ホスホチロシンフォスファターゼ活性、上皮間葉転換マーカーの発現を調べた.さらに運動能,浸潤能についても調べた.また,FACSを用いてSP細胞の抽出,細胞免疫染色を行った.しかしながら,CDX2高値のT84においてpHT2コントロール株およびpHT-2のCDX2-ShRNAによる遺伝子特異的発現抑制株でのCDX2のノックダウンが安定してうまくいっていないため,実験が遅れている.その理由として,T84の増殖能が悪いのがうまく機能しないと考えている.CaCO2,DLD-1細胞で試みている.
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今後の研究の推進方策 |
ヒト大腸癌細胞株10種(Colo201, Colo205, LoVo, DLD-1, HCT15, Colo320DM, HT29, HT29N2, CaCO2, T84, )の大腸癌細胞株の細胞接着関連タンパク質の発現および遺伝子変異の解析とチロシンキナーゼ、ホスホチロシンフォスファターゼ活性、上皮間葉転換マーカーの発現結果により,Met,IGF,活性型Rac1,CDX2,βカテニン,Eカドヘリン,他関連分子の発現プロファイルが整っている.pHT2のノックダウン実験を今後遂行していく.しかしpHT2がうまく機能しない場合は他のプラスミド(MIGR)あるいはレンチウイルス感染システムに変更を考えている.
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