炎症性腸疾患において核酸医薬であるアンチセンスの局所治療が注目されている。私たちは、真菌の一種であるSchizophyllan (SPG)が一本鎖核酸(アンチセンス)と高分子複合体を形成すること利用し、SPGとantisense TNF-αの複合体を作製し、この複合体のin vitroでの作用および腸炎マウスモデルに投与を行い治療効果について検討を行った。 2.5%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS) 急性腸炎モデルを使用し、サイトカイン発現を検討したところ、TNF-α、IL-1β、IL-6の発現増加を認めた。腸管由来のマクロファージをリポポリサッカライド(LPS)で刺激したところ、腸炎組織由来のマクロファージは多量のTNF-αを分泌した。SPGのレセプターであるdectin-1の発現は腸炎組織由来のマクロファージに発現が増強していた。そこで、マクロファージに対する複合体の効果について検討を行った。腸炎組織由来のマクロファージに、蛍光標識した複合体を添加し、取り込みについて検討を行ったところ、複合体の投与で有意な取り込みが認められた。その取り込みは4時間で約40%の細胞に認められた。また、複合体のTNF-αの抑制効果について検討を行ったところ、濃度依存性に抑制を認めた。 DSS急性腸炎モデルに、0.5mg/kgを週3回の注腸投与を行い、局所治療効果の検討を行った。複合体投与により腸炎による体重減少や腸管長の短縮は著明に抑制された。内視鏡所見では、炎症の程度は軽度となり、組織学的にも炎症細胞の浸潤や潰瘍形成は著明に改善を認めた。腸管組織のサイトカイン発現についても、改善を認めた。 以上より、複合体投与はTNF-αの産生を有意に抑制し、腸炎を有意に改善した。SPGを使用したデリバリーシステムにより、核酸医薬が炎症性腸疾患対する新しい治療戦略となりうることが期待される。
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