研究課題/領域番号 |
25460964
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
光山 慶一 久留米大学, 医学部, 教授 (20200066)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分子イメージング / 潰瘍性大腸炎 / 潰瘍性大腸炎関連大腸癌 |
研究概要 |
浦野らにより開発された癌細胞に取り込まれた後に初めて発光する蛍光プローブを用いて、潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌(以下潰瘍性大腸炎関連大腸癌)の動物モデルにおける高感度蛍光イメージングの有用性を検討中である。 まず大腸癌の標的タンパクに対する各種抗体(抗epidermal growth factor receptor(EGFR)抗体、抗human epidermal growth factor receptor type2 (HER2)抗体など)を、研究協力者の東京大学 浦野教授より供与を受けた蛍光プローブ(ローダミンベースのpHプローブなど)を用いてラベル化し、抗体蛍光プローブの作製を行った。 その後、EGFR やHER2などの大腸癌の標的タンパクが過剰発現している腫瘍細胞株にプローブが取り込まれるか否か、さらにエンドサイトーシスに伴うpH低下により蛍光上昇が起こるか否かを検討することにより抗体蛍光プローブの特異性を確認した。 UC関連大腸癌モデルマウスの摘出標本を用いて、抗体蛍光プローブのex vivoでの評価を行う。モデルとしてはまずデキストラン硫酸/とアゾキシメタン惹起性大腸癌マウスを使用した。本モデルマウスの大腸を摘出し、粘膜面を表側にして迅速に固定し、粘膜表面に抗体蛍光プローブを散布する。室温にてインキュベーションした後、イメージアナライザー(MaestroTM, CRI)を用いて癌部と非癌部の発光状態を経時的に観察した。観察終了後、ホルマリン標本を作製し、HE染色、免疫染色(EGFR, HER2, p53,β-catenin, Ki-67など)による組織像を観察し、蛍光イメージング像と対比した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、最初にEGFR抗体、HER2抗体などを蛍光プローブによりラベル化して抗体蛍光プローブの作製を行い、EGFR やHER2などの大腸癌の標的タンパクが過剰発現している腫瘍細胞株にプローブが取り込まれるか否か等を検討しプローブの特異性を確認した。 次にデキストラン硫酸/とアゾキシメタン惹起性大腸癌マウスとT細胞β受容体/p53遺伝子二重欠損マウスの2種類のUC関連大腸癌モデルマウスの摘出標本を用いて、抗体蛍光プローブのex vivoでの評価を行う予定であった。 まずデキストラン硫酸/とアゾキシメタン惹起性大腸癌マウスでの評価を行なった。本モデルは刺激物質デキストラン硫酸と発癌物質アゾキシメタンをマウスに投与し約2-3ヶ月後に大腸癌発生がみられるが、その発生頻度は予備検討の段階では90%以上であった。 しかし今回の検討では、大腸癌の発生頻度が 30-40%と大幅に低下した。そのため、予定の担癌マウス数を確保し、その後の解剖、腸管摘出、抗体蛍光プローブの散布、イメージアナライザーでの観察、ホルマリン固定後のHE染色、免疫染色など一連の実験を行なうためには予定以上の期間が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、潰瘍性大腸炎関連大腸癌モデルマウスであるT細胞β受容体/p53遺伝子二重欠損マウスを使用して、デキストラン硫酸/とアゾキシメタン惹起性大腸癌マウスと同様のex vivoでの検討を行う。次に、デキストラン硫酸/とアゾキシメタン惹起性大腸癌マウスとT細胞β受容体/p53遺伝子二重欠損マウスを使用してin vivoでの検討を行う。抗体蛍光プローブを注腸投与したのちに蛍光内視鏡検査を行い、大腸粘膜での発光状態を確認し、発光部より生検を行い、その組織像を検討する。その後大腸を摘出して固定し、イメージアナライザーを用いて発光状態を再度観察する。 最終年度は、ヒト大腸癌の摘出標本を用いたex vivoでの評価 を行う予定である。外科的摘出された通常大腸癌または潰瘍性大腸炎関連大腸癌組織から、ごく少量の癌部と非癌部組織を採取する。粘膜面を表側にして採取組織を迅速に固定したのちに、抗体蛍光プローブを散布する。室温にてインキュベーションした後、イメージアナライザーを用いて癌部と非癌部の発光状態を経時的に観察する。観察終了後、ホルマリン標本を作製し、HE染色、免疫染色(EGFR, HER2, p53,β-catenin, Ki-67など)による組織像を観察し、蛍光イメージング像と対比する。さらに、これまでに動物モデルとヒト標本から得られた結果をまとめ、成果の発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、潰瘍性大腸炎関連大腸癌モデルマウスとしてデキストラン硫酸/アゾキシメタン惹起性大腸癌マウスを作製して検討したが、本モデル作製時の癌発生頻度が予備検討のときの発生頻度よりも著明に低下した。そのため、当初予定していた数の担癌マウスを作製するのに予定以上の期間を必要としたため次年度使用額が生じた。 最初に、本年度に行なう予定であったT細胞β受容体/p53遺伝子二重欠損マウスを使用して、デキストラン硫酸/アゾキシメタン惹起性大腸癌マウスと同様のex vivoでの検討を行う。 次に、マウス、デキストラン硫酸、アゾキシメタン等を購入し、デキストラン硫酸/アゾキシメタン惹起性大腸癌マウスを作製してin vivoでの検討を行う。抗体蛍光プローブ投与後に蛍光内視鏡検査を行い、発光部より生検して組織像を検討する。さらに大腸を摘出し、イメージアナライザーで発光状態を観察する。終了後、ホルマリン標本を作製し、購入予定の免疫染色用抗体(EGFR, HER2, p53,β-catenin, Ki-67等)を用いて染色を行ない、イメージング像と対比する。T細胞β受容体/p53遺伝子二重欠損マウスでも同様のin vivoでの検討を行う。さらに、これまでの成果を学会で発表する。
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