研究課題
炎症性腸疾患 (潰瘍性大腸炎、クローン病) は近年著しい増加傾向にある若年発症の慢性疾患で、消化管局所の免疫応答異常を特徴とする。本研究では免疫細胞におけるエピゲノム異常の探索より炎症の重篤化機構の解明を目指している。前年度に引き続き、ヒストンメチル化修飾 (H3K4me3、H3K9me3、およびH3K27me3) を次世代シークエンサーを用いて網羅解析したデータのバイオインフォマティックス解析を進め、CD33陽性樹状細胞/マクロファージにおいて、特にH3K4me3 (活性化マーカー) +H3K27me3 (発現抑制マーカー) のいわゆる二価修飾と疾患との関連を見出した。疾患特異的H3K4me3+H3K27me3二価修飾と遺伝子発現変化との間に関連は見出されなかったことから、潰瘍性大腸炎においてはエピジェネティック修飾機構そのものが病的であると考えられた。そこで、エピジェネティック修飾関連遺伝子の発現を、次世代簡易シークエンサーIon Protonを用いたAmpli-seq法を用いて測定する系を確立した。潰瘍性大腸炎においてはH3K4me3 writers、H3K27me3 writersの発現亢進と、一部のH3K27me3 erasersの発現低下が顕著であり、これらが疾患に関連する病的エピジェネティック修飾機構の原因と考えられた。更に、正常と潰瘍性大腸炎で発現が有意に異なる遺伝子の発現プロファイルを用い、潰瘍性大腸炎とクローン病のクラスター解析を行ったが、両者に違いは認められなかった。
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Immunology
巻: 147 ページ: 21-29
10.1111/imm.12537