研究課題/領域番号 |
25460968
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大川原 辰也 北海道大学, 薬学研究科(研究院), その他 (00374257)
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研究分担者 |
武田 宏司 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60261294)
大西 俊介 北海道大学, 大学病院, 講師 (10443475)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マクロファージ遊走阻止因子 / 非アルコール性脂肪肝炎 / 肝線維化 |
研究実績の概要 |
当該年度においてBalb/cマウスにてマウス非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルをコリン・メチオニン欠損食(MCD食)で発症させた。経時的に4週、8週、16週の時点での肝組織内での脂肪滴の貯留、免疫細胞の浸潤、線維化の程度を観察した。脂肪滴の貯留の程度についてはMCD食飼育による4週の脂肪滴貯留の範囲より8週後の貯留の範囲が急激に増大していた。8週後と16週後の脂肪滴貯留の程度は大きな差を認めなかった。炎症細胞の浸潤はヘマトキシリン・エオジン染色によって確認し、MCD飼育後の各週の群間では著明な差を認めなかった。マッソン・トリクローム染色による肝線維化についてもMCD食飼育後4,8週後ではMCD非投与群と比較しても差を認めなかった。MCD食飼育16週後についても同様の傾向であった。しかしながらこれらを指数化して微細な変化がどうかを確認する必要があると思われ別の染色方法や程度を数値化して検討する予定である。 それと同じくして、MCD食飼育によるNASHモデルについてマクロファージ遊走阻止因子(MIF)の役割を検証するために、MIF活性を阻害する化合物であるISO-1 を他文献の方法に準じて週2回,1回4mg/bodyを腹腔内投与し,8週間にて計16回の投与を行なった。その後、体重測定を行ったところISO-1治療群、非治療群とも通常食飼育では微増であったが、MCD食飼育によってその両軍とも著明な体重減少が見られた。さらに両群の体重には大きな差を認めなかった。肝臓の肉眼的所見についてもISO-1治療群、非治療群ともMCD飼育によって黄色調になっており、組織学的所見においても肝組織内の脂肪滴が多数みられ、免疫細胞の浸潤程度も治療群、非治療群とも同様であった。今回の結果について再度検証する必要があるが、ISO-1治療のMIFへの効果を確認する他モデルも検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
炎症細胞の浸潤程度や肝線維化の程度の進展をみるためにNASHモデルマウスの発症経過を観察するために時間を要し、またそれらを解析するために相当な時間を要した。具体的にはMCD食による飼育にて投与後の経過が進むごとにどの程度脂肪滴貯留、肝線維化が進展するか、また既報のデータと類似な結果となるか確認の試験に時間を要した。我々の試験では、肝線維化はMCD食を投与するだけでは相当の期間を経ても軽微なままであった。また、MIF活性阻害剤ISO-1について既報の投与法の妥当性を確認するためにも時間を要したため本研究計画から若干の遅れを生じることとなった。しかしながらこれらの試験によって、我々の研究に対して妥当性の高いNASHモデルの解析法を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、さらにin vivoでの、つまりNASHモデル動物による試験を進めていく。特にMIF発現についての解析や炎症性メディエーター、代謝、酸化ストレス物質の解析、線維化マーカーの更なる解析を肝組織において進めていく。MIF活性阻害についてこれまではISO-1を投与して解析してきたが、MIF抗体やMIF自己抗体作製のワクチン投与もしくは他の化合物にて治療を行い病態の変化について解析していく。その際、MCD食飼育以外の肝組織傷害モデルについてもこれらのMIF活性を変化させる治療の効果を解析していく。 MIFノックアウトマウスを用いたNASHモデルを行い上記の治療群との病態の変化の比較を検討していく。MIFノックアウトマウスの繁殖や飼育については時間的な問題も生じるがNASHにおけるMIFの役割を解明するために非常に重要な解析方法と考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由として、MIFノックアウトマウス作製を進める予定が遅れているためであり、計画通りに助成金を消化できなかった。未使用金額についてはさらにMIFノックアウトマウスを用いたNASHおよび他の肝疾患モデルの解析に助成金を使用する計画である。またin vivo実験だけでは解明しずらい細胞内のシグナルや蛋白・遺伝子発現についても翌年度分の助成金を用いin vitro実験を計画している。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額の540,000円については、次年度のMIFノックアウトマウス作製やそのNASHモデル解析に使用する。他の未使用金額のうち95,000円についてはそれと対照群として用いる野生型マウスを購入することに充てる。さらに未使用金額のうち54,000円についてはMIFDNAワクチン投与の際に用いる遺伝子導入平行ニードルの費用に充てる。さらなる未使用額316,564円についてはMIF活性阻害治療やMIFノックアウトマウスによるNASHモデルのサンプルを解析する遺伝子工学キットに使用する。
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