研究課題
基盤研究(C)
HCVの感染・増殖には、細胞膜や細胞内の脂質代謝が密接に関係していることが示唆されているが、感染時の肝細胞全体の代謝動態については十分に解明されていない。そこで本研究では、従来のプロテオーム解析等に比べ実際の表現型に最も近いとされるメタボローム解析を応用し、申請者がこれまで取り組んできたHCV各遺伝子型の感染培養系を用いて、HCV増殖に関与する代謝物質群(経路)を網羅的に解析・同定しその機序を明らかにすることを目的とした。平成25年度は、過去に当研究室で作成、保存されているHCV遺伝子型1a、1b、および2a型の感染性キメラクローンを用いて、HCV感染培養系と非感染系の樹立と維持を行った。以降のデータの再現性を得やすくするため、同じ感染力を示すウイルスストックを各遺伝子型別に大量に作成したが、それらをHuh7.5.1細胞へ接種したところ、過去に申請者らが得られたデータに比べ、培養上清中のウイルス量やナイーブ細胞への感染効率が安定しなかった。均一なウイルスストックを用いることが本研究遂行には必要と考えられるため、共同研究者である米国食品医薬品局(FDA)の肝炎ウイルス研究室と連携し、必要なプラスミド等を当研究室へ送ってもらうことで話を進めている。それらを用いることで感染培養系を安定させ、当初平成25年度後半の研究計画であったメタボローム解析に取り組めると考えている。
3: やや遅れている
本研究の基盤となるHCV各遺伝子型の感染培養系の再構築が必要となったため、当初の研究計画に若干遅れが生じている。平成25年度に行われた研究棟の引越し作業等でフリーザーの温度変化が生じたことが原因と思われるが、研究室内に保存所有していたHCV各遺伝子型の感染性ウイルスストックを用いたHuh7.5.1細胞への感染実験結果が安定しなかったため、その感染力価を測定したところ、以前に比べ、その感染力価が低下していることが判明した。感染細胞の状態が不均一であるとメタボローム解析により偽陽性や偽陰性データを生み出しやすいため、ウイルスストックの作成実験手技を連携研究者に再度指導するとともに、研究の速やかな遂行のため、共同研究先である米国食品医薬品局(FDA)肝炎ウイルス研究室から、すでに安定した感染効率が得られているウイルスストックを搬送してもらうこととしている。
研究の速やかな遂行のため、共同研究者である米国食品医薬品局(FDA)肝炎ウイルス研究室(Major博士)と連絡を取り、近日中にキメラHCV粒子とプラスミドを送ってもらい、研究室内での培養感染系の再構築を行うことにしている。その上で、当初平成25年度に予定していたHCV各遺伝子型の感染培養細胞におけるメタボローム解析の実施と、HCV増殖に関わる候補代謝経路の同定を進めていく。同時に、実際のHCV感染患者における臨床サンプル(血液、肝組織)を用いた候補代謝経路の検証に向けて、平成26年度も引き続き臨床サンプルの収集を行う。
研究開始当初、25年度中にメタボローム解析に入る予定であったため、その予算を計上していた。しかし上述のとおり研究計画に若干の遅れが生じたことから、その分の消耗品費等を26年度支出予定とした結果、一部使用額に変更が生じた。米国食品医薬品局(FDA)からのプラスミドやキメラHCV粒子の搬送に研究費の一部を使用予定である。それらを用いたin vitro感染培養系の再構築ができた段階で、平成25年度に使用予定であったメタボローム解析関連試薬等の購入する予定である。候補代謝経路の絞込みを行った後、HCV増殖に関わると推定される標的経路に対する抗体やsiRNA、代謝経路阻害剤などの添加によるin vitro機能操作によって、検証実験を行う予定である。
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