研究課題/領域番号 |
25460974
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡辺 久剛 山形大学, 医学部, 講師 (00332536)
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研究分担者 |
邵 力 山形大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80344787)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
HCVの感染・増殖には、細胞膜や細胞内の脂質代謝が密接に関係していることが示唆されているが、感染時の肝細胞全体の代謝動態については十分に解明されていない。そこで本研究では、従来のプロテオーム解析等に比べ実際の表現型に最も近いとされるメタボローム解析を応用し、申請者がこれまで取り組んできたHCV各遺伝子型の感染培養系を用いて、HCV増殖に関与する代謝物質群(経路)を網羅的に解析・同定しその機序を明らかにすることを目的とした。 平成25年度において、過去に当研究室で作成した感染性キメラクローンを用いて感染実験を行ったところ、Huh7.5.1ナイーブ細胞への感染効率が安定しなかったため、平成26年度は、Chisari博士から新たにHuh7.5.1細胞を分与してもらい、また米国食品医薬品局(FDA)のMajor博士から感染性HCVキメラウイルス作成に必要なプラスミドを提供してもらった。 その結果、免疫染色にて80-90%近い感染効率の確認と培養上清中への高力価のHCVウイルス分泌が確認でき、感染培養系を再構築することができた。そこでこれらの系を用いてキメラHCV感染前および感染後96時間後の感染細胞および培養上清を回収、前処理の後、メタボローム解析を行った。現在、解析結果を待っている状況である。解析結果を受けてすぐに検証解析に入れるよう、実際のHCV感染患者における臨床サンプル(血液、肝組織)を、平成26年度末ですでに1,400名分収集を終えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に行われた研究棟の引越し作業等でフリーザーの温度変化が生じたことが原因と思われる感染性ウイルスストックおよびナイーブ細胞の劣化に対し、26年度は研究の遂行に耐えうる新たな感染系を再構築することができた。その実験系を用いて、当初予定したメタボローム解析を終え、現在、結果の解析中である。また、臨床サンプルを用いた二次解析にすぐに入れるよう、HCV感染患者のサンプル収集もすでに十分量揃えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
すでにHCV感染培養細胞におけるメタボローム解析のための感染実験は済んでおり、現在その解析結果を待っている段階である。HCV感染増殖には複数の候補代謝経路が関与していると推定されるため、メタボローム解析結果をもとに候補経路の絞込みを進める。 さらに、すでに多数例の収集を終えたHCV感染患者における臨床サンプル(血液、肝組織)を用いて、in vitroで絞り込んだ候補代謝経路の患者における発現を臨床的にも検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度において感染培養系の再構築と、in vitroのメタボローム解析を遂行したが、今年度は比較的順調に研究が進み、一部消耗品について当初予算額よりも支出が少なかった。しかし現在行っている解析結果次第では27年度に再度関連消耗品の購入支出が必要となることが想定され、消耗品費等を27年度支出予定として繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
現在行っている解析にて候補代謝経路の絞込みを行った後、27年度はHCV増殖に関わると推定される標的経路に対する抗体や代謝経路阻害剤などを用いたin vitro機能操作によって、検証実験を行う予定である。同時に患者検体を用いて、HCV感染者における発現レベルの違いが病態に関与しているか検証する予定である。
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