研究課題
進行肝癌の治療開発を目標として、メタボロームを応用してmicroRNA122(miR122)の発現変化と癌幹細胞の変化について検討を行った。miR122の発現は肝細胞癌では正常肝細胞に比べて減少していることが多く、これまでの検討で、miR122の発現が低いほど 癌の性質が悪いことが示唆されていた。その原因をさらに明らかにするべく、miR122の低下した肝癌細胞あるいはmiR122を機能的にノックダウンしたマウスの組織を用いて、それらの細胞内での代謝物量の変化を網羅的にメタボローム解析に供したところ、アルギニン量が特徴的に上昇していることが示された。アルギニンは細胞外から細胞内に取り込まれるが、その際のトランスポートとしてSLC7A1 (別名CAT1)という輸送体を用いることが示されている。CAT1の発現量はmiR122によって調節され、miR122の低下した細胞ではCAT1の発現量が多くなり、細胞内へのアルギニンの取り込みが増えることが示唆された。アルギニンはNO合成酵素によってNOとL-シトルリンに変換される基質であり、そのことからもmiR122の低下した肝癌細胞内ではNOの合成が高まっていることが示唆された。NO産生量の増大はそれ自体が癌幹細胞の維持に働くことが報告されており、その結果 肝癌においても miR122の低下に伴って肝癌幹細胞の性格が強く出て癌の悪性化に関わっているものと考えられた。本年度はそれに対処すべく、低アルギニン食をマウスモデルで用いることで皮下に植えた肝癌細胞の増殖が抑えられることを示し、進行肝癌、特にmiR122の発現が低下した肝癌では低アルギニン食が有効な補助療法となる可能性が示唆された。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
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