研究課題/領域番号 |
25460984
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
水腰 英四郎 金沢大学, 医学系, 准教授 (90345611)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | がん免疫療法 / T細胞レセプター / ペプチドワクチン / 遺伝子治療 / アルファフェトプロテイン / ヒトテロメラーゼ逆転写酵素 / 肝細胞がん / ELISPOT |
研究実績の概要 |
これまでに我々が施行してきたペプチドワクチン臨床試験に参加した患者のリンパ球を用いて、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)とアルファフェトプロテイン(AFP)由来のエピトープに特異的なT細胞レセプターのクローニングを行った。同時に肝細胞癌患者と健常者におけるT細胞レセプターのレパートリー解析と機能解析を行った。AFP由来ペプチドワクチンを投与した患者のうち、腫瘍の完全消失を認めた患者からは3種類のTCR、2年以上にわたって腫瘍の進展が抑制された患者からは4種類のTCRのクローニングに成功した。健常者の末梢血リンパ球にこれらのTCRを遺伝子導入したところ、対応するペプチドで刺激した標的細胞に対して強い細胞傷害活性を示した。一方、AFP由来ペプチドワクチンの治療効果が乏しかった患者や健常者からは、1もしくは2種類のTCRしかクローニングできなかった。また、これらのTCRは標的細胞に対する細胞傷害活性が弱かった。これらの結果は、将来、TCRを用いた癌の遺伝子治療を行う際には、ペプチドワクチンを投与した患者の中でも、明らかな抗腫瘍効果を示した患者からペプチド特異的なTCRをクローニングすることが重要であることを示唆するものであった。 AFPに加えて、hTERT由来ペプチド特異的TCRのクローニングも行った。hTERT由来ペプチドワクチンを投与し、肝細胞癌に対する標準的治療であるラジオ波焼灼療法後の再発が長期にわたって抑制された患者からは3もしくは4種類のhTERT由来ペプチド特異的TCRのクローニングが可能であった。これらのTCRを遺伝子導入した健常者末梢血リンパ球は、いずれも標的細胞に対して強い細胞傷害活性を示した。これらのTCRのレパートリー解析では、TCRを構成するアルファ鎖、ベータ鎖はそれぞれ異なるものから構成されていた。今後はこれらのTCRのペプチドへの結合親和性を検討し、癌に対するTCR遺伝子治療に適したものを選択していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」ならびに「研究計画・方法」において作成したタイムラインを遵守しており、ペプチドワクチンを投与した肝細胞癌患者の末梢血リンパ球からペプチド特異的な細胞傷害性T細胞を単一細胞レベルで分離し、同細胞からペプチド特異的T細胞レセプターのクローニングに成功した。これらの工程を当初の予定どおりアルファフェトプロテインとヒトテロメラーゼ逆転写酵素由来のペプチドにおいて終了し、それぞれのT細胞レセプターのレパートリー解析も終了した。以上の経過から本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後も交付申請書に記載した「研究の目的」ならびに「研究計画・方法」において作成したタイムラインを遵守し、計画どおりの手法によって研究を進めていく。特に次の工程で重要なのは、肝癌患者末梢血リンパ球へのTCR遺伝子導入方法とその導入効率の検討、ならびに遺伝子を導入するための細胞選択方法の確立であるが、すでに一部のTCRでは本検討が進行している。今後は単一の遺伝子導入方法にとどまらず、将来への遺伝子治療への応用幅が広がるように、より多くの手法を検討するように努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
6種類のペプチドワクチンに対して、それぞれのペプチドに特異的なT細胞レセプター(TCR)のクローニングを行う予定であったが、取得されたAFPとhTERT由来ペプチド特異的TCRの遺伝子数が予想以上に多かったため、これらのレパートリー解析や機能解析に多大に時間を要し、他のペプチド特異的TCRのクローニングができなかった。このため、ペプチド特異的T細胞の検出に必要なAFPとhTERT以外のテトラマーの購入を行わなかったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度において、これまでに検討ができなかった他の腫瘍関連抗原由来ペプチド特異的TCRを取得するための試薬(テトラマーを含む)を購入する計画である。
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