研究課題
基盤研究(C)
HBe抗原陰性慢性肝炎は間欠的に激しい肝炎を起こす傾向があり、肝硬変や肝癌へ進行しやすいことが報告されている。しかし、HBe抗原のセロコンバージョン(SC)直後にHBe抗原陰性慢性肝炎となる症例を予測することは困難である。平成25年度は、SC後のALT値の推移からHBe抗原陰性慢性肝炎を定義し、この発症例と非発症例を比較検討することによりHBe抗原陰性慢性肝炎発症と関連する因子を検討した。HBe抗原SC前3年から後3年以上経過観察可能であったB型慢性肝炎の36例を対象とした。SC前後に、1年間以上ALT値が正常化した最初の時点をSCに伴う肝炎終息と定義すると、SC後2年目までは肝炎の終息する症例が多く、それ以降は少なくなった。このため、SC後2年目以降の肝炎をHBe抗原陰性慢性肝炎として評価した。SC後2年目以降のALT値の平均AUCの分布をみると30 IU/Lを境に2峰性の分布を示した。このため、平均AUC が30 IU/L以上をHBe抗原陰性慢性肝炎と定義し、30 IU/L未満の症例との間で、ALT値、HBV DNA量、HBs抗原量、HBcr抗原量、HBe抗原非産生変異などのSC前後での推移を比較検討した。HBe抗原陰性慢性肝炎発症を予測する因子としては、SC後2年目のALT値の異常が多変量解析で有意な因子であった。次に、SC後2年目のALT値が正常の症例に限って検討すると、この時点でのHBcr抗原量とHBV DNA量の高値が有意の因子であった。以上の結果より、SC後2年以内に肝炎が沈静化する症例では HBe抗原陰性慢性肝炎の発症は少ない。しかし、このような症例においても HBcrAg量(> 3.9 U/ml)またはHBV DNA量(> 4.5 log copy/ml)が高値の症例では発症の危険性が高く注意が必要であることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本研究の対象となる、長期経過観察が行われHBe抗原のセロコンバージョンを伴うB型慢性肝炎症例のピックアップを行い、背景因子の入力が終了した。さらに、血清検体をシリーズで整理し、HBs抗原量やHBcr抗原量の測定を行った。ALT値やHBV DNA量の推移もデータ収集が終わり、初年度に基本的な解析が可能となった。以上のことから、初年度の計画をほぼ予定通り実行したと判断する。
今後は、HBe抗原の持続陽性例、セロコンバージョン例、持続陰性例を対象に、HBe抗原非産生変異の測定を行う。まず、HBV遺伝子のプレコア、コアプロモーター領域にあるメジャーなHBe抗原非産生変異をキットを用いて測定する。続いて、セロコンバージョン前後で全塩基配列の決定を行い、マイナーなHBe抗原非産生変異の存在を確認する。これらの測定結果を元に、HBe抗原非産生変異とセロコンバージョンとの関連、さらには、病態との関連を検討する。これらの測定は時間を要するが、後2年の研究期間中には遂行可能と思われる。最終的に、これらのデータを加え、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症予測や病態解明を行う。
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