研究課題/領域番号 |
25460988
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
清水 雅仁 岐阜大学, 医学部附属病院, 講師 (90402198)
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研究分担者 |
森脇 久隆 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50174470)
白木 亮 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (60402195)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肥満 / 糖尿病 / 肝発癌抑制 / 非アルコール性脂肪肝炎 |
研究概要 |
メタボリック症候群のモデル動物で、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常を呈するSHRSP.Z-Lepfa/IzmDmcr (SHRSP-ZF) ラットを用いて、新規NASH関連肝発癌モデルを作成した。本研究によって、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常、アディポカイン異常に加え、レニン-アンギオテンシン系(RAS)の活性化に伴う炎症および酸化ストレスの亢進と、肝線維化の促進が、SHRSP-ZFラットにおける肝前癌病変の発症促進に繋がっている可能性、すなわちRASの亢進が、NASH関連肝発癌において重要な役割を果たしている可能性が明らかになった。RASの過剰活性化や、それによって惹起される炎症および酸化ストレスの亢進は、肥満・糖尿病・NASH関連肝発癌抑制において、重要な標的分子となる可能性が示唆された。 緑茶カテキンEGCGが、脂肪肝炎および肝線維化を改善し、酸化ストレスの亢進とRASの活性化を抑制することで、肥満・糖尿病・高血圧ラットにおける肝前癌病変形成を抑制することを明らかにした。日常生活で容易に摂取可能な緑茶カテキンが、肥満・糖尿病・NASH関連肝発癌抑制において有効なphytochemicalの一つである可能性が示唆された。 肝臓の免疫機構や、肝炎の発症に深く関与している細胞内酵素indoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の発現・活性低下が、脂肪肝炎に対し促進的に働きこれを増悪させる可能性を、同酵素のノックアウトマウスを用いて明らかにした。IDOは脂肪肝炎の発症・進展に対して抑制的であることより、NASHの治療において、IDOは重要な標的分子の一つとなりうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SHRSP-ZFラットを用いた新規NASH関連肝発癌モデルは、肥満・糖尿病・NASH関連肝発癌抑制を実践するために有効な各種候補薬剤のスクリーニングを行う上で、有用かつ汎用性の高い実験モデルである。本モデルによって、薬剤投与による肥満・NASH関連肝発癌抑制に関する研究の推進がより容易になった。実際、ある種の糖尿病治療薬やキサンチン誘導体が、肥満・NASH関連肝発癌抑制効果を発揮することが、本モデルによって確認されている 脂肪細胞と肝癌細胞、さらには炎症細胞を様々な条件下で非接触共培養し、これらを結ぶ液性因子を検討するのに有用な「培養系NASHモデル」の作成についても条件設定が進んでおり、keyとなる幾つかの候補分子もピックアップされている。
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今後の研究の推進方策 |
SHRSP-ZFラットを用いたNASH関連肝発癌抑制実験より得られたサンプル(肝、血清、内臓脂肪等)における、経時的な遺伝子発現の変化や、タンパク質の相互作用・細胞内シグナルの変化について網羅的な解析を行い、肥満・NASH関連肝発癌を促進または抑制する候補遺伝子をスクリーニングする。 肥満や糖尿病を合併した、慢性肝疾患・肝癌患者血清の各種adipokineの測定と、CT/MRI画像の解析(肝臓の評価のみならず、骨格筋量・内臓脂肪量も測定)を行い、肝発癌・早期再発高危険群の同定に有用な新規biomarker・予後予測因子の検索を行う。 緑茶カテキンや生活習慣病治療薬を用いて、肥満・メタボリック症候群を合併する慢性肝疾患患者の肝発癌抑制を目的とした臨床介入試験(予備実験)を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は実験の準備段階であり、来年度より本格稼働するため、実験器具・試薬の購入費増加が予想される。従って翌年度への繰り越しが生じました。 主な支出は実験器具・試薬の購入が考えられ、また中間成果発表の為国際学会ならびに国内学会での発表旅費が考えられる。
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