研究課題/領域番号 |
25460990
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
竹井 謙之 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10306954)
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研究分担者 |
GABAZZA Esteban 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00293770)
岩佐 元雄 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80378299)
藤田 尚己 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), リサーチアソシエイト (80378398)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脂肪性肝炎 / 動脈硬化症 / 凝固・線溶系 / 組織リモデリング / protein S |
研究実績の概要 |
非アルコール性及びアルコール性脂肪性肝炎(NASH/ASH)は肝硬変・肝癌に進展しうる病態であり、動脈硬化症とも深く関連している。本研究は、NASH/ASHと動脈硬化進展に共通する組織リモデリング機構を凝固・線溶系機能の平衡破綻の面から検討し、「全身に展開する慢性炎症と組織リモデリング」という視点から両者の病態連関を解明するとともに、凝固・線溶系への介入によるNASH/ASHと動脈硬化症の同時制御を目的とする。平成25年度はASH/アンジテンシンII誘導動脈硬化症合併マウスモデルにおいて、動脈硬化進展における骨髄由来幹細胞の関連を検討し、アルコール摂取量と末梢血中SDF-1やVGEFの濃度とが逆相関することを示した。脂肪性肝炎に合併する動脈硬化症にはCXCL12/SDF-1低下とその結果によるvascular progenitor cell動員低下が関与することが明らかになった。 平成26年度は、マウス脂肪性肝炎モデルにおいて、ヒトprotein S (hPS) TGマウスでは野生型に比べて脂肪性肝炎が増悪し、その機序にはprotein S (PS)によるNKT細胞の活性化が肝障害の進展に重要な役割を果たすことを示した。 In vitro実験系を用いた検討により、hPSはNKT細胞を活性化し、2型サイトカインであるIL-4,IL-13 及びオステオポンチンの発現を誘導すること、さらにhPSはNKT細胞の受容体型チロシンキナーゼMerを介してAktのリン酸化を促進し、アポトーシスを抑制するとともに、Fasリガンドの発現を上昇させ、直接肝細胞障害を促進することを明らかにした(J Thromb Haemost 2015;13:142-54)。凝固線溶系因子であるPSがNKT細胞の活性化を調節していることが示され、凝固線溶系因子の平衡破綻が、非アルコール性脂肪性肝炎の進展に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度までの2年間で、protein SによるNKT細胞活性化が脂肪性肝炎の発症・進展に重要な役割を果たすことを示した。またアルコール性脂肪性肝炎における動脈硬化惹起にはCXCL12/SDF-1低下によるvascular progenitor cell動員低下が関与することを見出した。さらに脂肪性肝炎モデルにおいて、ヒトPS (hPS) TGマウスでは野生マウスに比して脂肪性肝炎が増悪し、その機序にはhPSによるNKT細胞の活性化及びオステオポンチン産生増大が関与することを明らかにした。PS が当初の予想に反して脂肪性肝炎を悪化させるという結果が得られ、その確認と検証に時間を要したが、おおむね予定通りの進行状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度では前年度に得た知見の詳細な機序の解析を進めるとともに、以下の検討を行う。 Protein S-NKT細胞-オステオポンチン経路がNASH進展に及ぼす役割の解明:ヒトprotein Sトランスジェニックマウスを用いたNASH・動脈硬化症モデルにおける動脈硬化病変と肝線維化についてprotein Sの役割について検討する。NKT細胞の抑制、オステオポンチンの抑制によって病態の進展が抑制することを検証する。
NASH/ASH・動脈硬化症合併モデルを用いた肝線維化・動脈硬化に及ぼすPAI-1およびTAFIの役割の検討:ApoE欠損マウス単独、もしくは凝固促進因子との2重遺伝子欠損マウスを用い高脂肪食にてNASH/ASH・動脈硬化症合併モデルを作製し、凝固・線溶系の変調が動脈硬化と肝障害、両者の促進因子であることを示す。ApoE単独欠損(ApoE (-))、ApoEおよびPAI-1 もしくはTAFI2重欠損マウス(ApoE(-)PAI-1(-)、ApoE(-)TAFI(-))、これら3群のうちPAI-1もしくはTAFI欠損群では肝障害や動脈硬化性病変が軽減していることを検証する。さらに、各群において、凝固・線溶因子群の発現プロフィールと動脈硬化や肝障害との相関を解析する。
NASH・動脈硬化症の病態形成におけるプロテインC凝固制御系因子の役割:凝固制御系の主要な因子である活性化プロテインC (APC)の受容体EPCRの欠損マウスを用いてNASH・動脈硬化症モデルを作成し、動脈硬化病変と肝線維化について検討を行う。またAPC投与群と非投与群の動脈硬化、肝障害の程度を比較検討し、APCがNASHと動脈硬化のいずれの進展も抑制するか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予想に反してProtein S が脂肪性肝炎を悪化させるという結果が得られ、平成26年度その確認と検証に時間を要したが、試薬等で新たに購入するものは少なく、結果として予算の使用が次年度(平成27年度)に延びた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、Protein S-NKT-osteopontin 経路がNASH進展に及ぼす役割の解明、NASH/ASH・動脈硬化症合併モデルを用いた肝線維化・動脈硬化に及ぼすPAI-1およびTAFIの役割の検討やNASH・動脈硬化症の病態形成におけるプロテインC凝固制御系因子の寄与に関する新しい実験系を用いた検討を行う予定であり、「次年度使用額」と平成27年度分を合わせた金額を使用して研究を進展させるべく計画している。
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