研究課題/領域番号 |
25460993
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
笠原 彰紀 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70214286)
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研究分担者 |
宮城 琢也 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80532986)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | C型肝炎 |
研究概要 |
申請者はこれまでにウイルス感染に対する宿主防御応答である自然免疫においてNK細胞がC型慢性肝炎において重要な役割を果たすことを報告してきた。 平成25年度はC型慢性肝炎患者(26例)、健康人より抽出した単核球においてNK細胞抑制性レセプターNKp46、NK細胞活性型レセプターNKG2Aの発現およびNK細胞内STAT1発現をフローサイトメトリーにて解析した。また、C型慢性肝炎患者の肝生検組織を用いて肝組織におけるSTAT1を含めたインターフェロンシグナルに関わるInterferon Stimulated Genes(ISG)の遺伝子発現について解析しNK細胞内STAT1蛋白発現との関連について検討を行った。C型慢性肝炎患者と健康人とで比較するとNKp46陽性NKG2A陽性のNK細胞の割合はC型慢性肝炎で有意に高かった(HS 4.9%、CHC10%)。肝組織におけるISG遺伝子発現と肝組織におけるSTAT1遺伝子発現には有意な相関をみとめた。また肝組織におけるSTAT1遺伝子発現とNK細胞内のSTAT1蛋白発現に相関をみとめた。またIL28B遺伝子近傍rs8099917多型とNK細胞内のSTAT1蛋白発現に有意な差を認めなかった。 以上より、NKp46陽性NKG2A陽性NK細胞はC型慢性肝炎の持続感染の成立や、炎症反応に関与することが示唆された。また、NK細胞におけるSTAT1蛋白発現が肝組織のISG遺伝子発現と相関がある可能性が示唆された。これまでに治療前の肝組織におけるISG遺伝子発現が高い群は治療抵抗性となることが報告されている。本研究結果は末梢血中のNK細胞のSTAT1蛋白発現を解析することで非侵襲的に治療抵抗例の抽出ができうる可能性を示唆しており、臨床的に意義の大きい成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、C型慢性肝炎の新規治療のめざましい開発により症例に合わせた治療選択が求められている。本研究は治療効果予測因子の一つであると報告されている肝組織におけるISGの遺伝子発現を末梢血NK細胞のSTAT1蛋白で代用できる可能性を示唆した研究であり、また非侵襲的に治療抵抗例を抽出できる可能性があることから臨床上も非常に有意義であると考えている。研究結果も十分でており、本申請課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の結果をもとにNKp46陽性NKG2A陽性NK細胞のインターフェロンシグナル伝達様式や細胞傷害活性について検討する。併せて患者症例の蓄積を重ねそれぞれの治療効果と、治療開始前の肝機能検査値、血小板、IL28B遺伝子多型などの情報と肝組織ISG発現レベル、NK細胞内STAT1蛋白発現レベルの関連を患者背景因子も含めて解析する。 また、治療後のNK細胞内STAT1の発現解析を行い治療が及ぼす影響について検討する。
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