研究課題
ウイルス感染時の宿主応答において、自然免疫応答の中でもNK細胞は重要な役割を担っている。C型肝炎ウイルス感染においてNK細胞のサイトカイン分泌能や細胞傷害活性能が変化していることを申請者らはこれまで報告してきた。平成26年度はC型慢性肝炎患者(CHC: 50例)、健康人(HS: 35例)の末梢血から抽出した末梢血単核球において、NK細胞活性型レセプターNKp46、NK細胞抑制型レセプターNKG2Aの発現をフローサイトメトリーで解析した。また、NK細胞亜分画をフローサイトメトリーで単離し、亜分画ごとにNK細胞活性関連因子の遺伝子発現をインターフェロン刺激の有無ごとにReal Time PCRで解析した。リンパ球中のNK細胞の頻度はC型慢性肝炎患者で有意に低下した(CHC: 8.3%, HS: 12.0%)。またNK細胞にはNKp46, NKG2Aともに高発現となるNKp46high NKG2Ahigh亜分画が存在し、NK細胞におけるこの亜分画の頻度はCHCで有意に増加していた(CHC: 10.3%, HS: 5.9%)。この亜分画はSTAT1, FasL, TRAILといった細胞傷害活性に関わる因子の発現が亢進していた。特にSTAT1はIFN刺激下で著明に発現が亢進した。この分画のIFNγの発現は、非刺激下では低下していたが、インターフェロン刺激により他分画と同等まで亢進した。以上より、NKp46high NKG2Ahigh亜分画は高い細胞傷害活性を有し、肝障害に関連する可能性が示唆された。また、本亜分画はインターフェロンによる応答性が異なり、インターフェロン治療における効果関連因子である可能性もあると考えられ、臨床的に意義の大きい成果である。
2: おおむね順調に進展している
NK細胞レセプターに着目し、NK細胞の活性型レセプターNKp46、抑制型レセプターNKG2Aがともに高発現している亜分画を同定し、健康者に比べてC型慢性肝炎患者でその頻度が高いことを確認した。またこの亜分画は細胞傷害活性に関連する因子の発現が亢進し、インターフェロンの応答性も異なり、この分画はインターフェロン治療の効果関連因子である可能性もあると考えられた。症例登録も平成25年度から累積しており、本申請課題はおおむね順調に進展していると考える。
平成26年度の結果をもとに、単離したNK細胞とC型肝炎ウイルス感染細胞株との共培養を行うことで、細胞傷害活性やIFNの応答性に関連している可能性のあるNKp46・NKG2Aレセプターの役割・意義を検討する。また、核酸アナログなどのIFNを投与しないC型肝炎に対する治療も実臨床で使用可能となっており、各種治療前後におけるNK細胞内STAT1蛋白発現レベルを解析し、インターフェロン投与有無によるその変化を比較検討する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
J Gastroenterol.
巻: 50 ページ: 313-322
10.1007/s00535-014-0965-8