研究概要 |
脂肪肝炎の背景に免疫老化現象があることをマウス脂肪肝、脂肪肝炎モデルで確認するために、マウス肝内浸潤T細胞のFACS解析を行った。具体的には、B6マウス45匹を3群に分け、普通食、高脂肪食、高脂肪高コレステロール食を投与し、投与後8週間、16週間、24週間で各3匹ずつ、肝臓を還流処置で脱血後に処理して肝内浸潤T細胞、NKT細胞、クッパー細胞を単離し、それぞれのマーカー(CD3,CD4, CD8, NK1.1, CD1d, CD11c,F4/80)およびT細胞の制御性マーカーであるPD-1. CTLA4, LAG3, CD25/foxp3でFACS解析を行った。結果、老化および脂肪化で肝内浸潤T細胞に発現する制御性マーカーの継時的な上昇が確認された。老化に伴う変化を脂肪化が助長していると考えられた。また、同時に末梢血、脾臓内のT細胞も単離し、肝臓での所見と比較検討を行った。脾臓でも肝臓と同様の傾向が確認されたが肝臓ほどの強い変化ではなかった。一方、末梢血ではほとんど変化がなく、肝内浸潤T細胞の変化を末梢血で予想することは困難であると結論した。次に、各6匹の残ったマウスより血液、肝臓をサンプル採取し、解析を行った。肝臓よりmRNAを抽出し、リアルタイムPCRで炎症性サイトカイン、ケモカインについて遺伝子発現解析を行ったところ、炎症の程度に応じてPD-1の発現が高い傾向があったが、同時にリガンドであるPDL-1の発現も上昇していた。さらに、得られた肝臓のパラフィンブロックからPD-1, LAG3の免疫染色を施行したところ、肝内浸潤リンパ球の一部にPD-1陽性細胞が確認されたが、その局在に関しては各群で有意な差はなかった。今後は、脂肪肝炎におけるPD-1発現の意義を検討する予定である。
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