研究課題
1.臨床研究:外来通院中の肝硬変患者36例に精神神経機能検査(NPテスト)を施行し、ミニマル肝性脳症(MHE:NCT-A, NCT-B, DST, BDTのうち2項目以上に異常を認める例)の有無を判定し、MHEの診断に有用なバイオマーカーを明らかにするため統計学的に解析した。結果として、MHEの罹患率は27.6%であり、MHE予測バイオマーカーとして血漿アンモニア濃度が最も有用であり、次いで血清アシルカルニチン/総カルニチン比が選択された(平成27年度第51回日本肝臓学会総会発表予定、英文論文準備中)。また、高アンモニア血症を伴う肝硬変患者(MHE合併例も含む)についてL-カルニチンを投与し、その臨床効果を確認する臨床研究を開始している。2.基礎的研究:平成25年度の研究では、正常ヒトアストロサイトに対するアンモニアの細胞毒性および細胞増殖抑制作用に対するL-カルニチンの改善効果を示したが、平成26年度はL-カルニチンの作用機序をメタボローム解析を用いて行った。結果として、アンモニア添加群ではアミノ酸代謝、脂肪酸代謝、炭水化物代謝のいずれにも異常をもたらし、とくにBCAA代謝の障害とともに神経障害作用をもつす4/3-Methyl-2-oxovaleric acidの増加と神経細胞保護作用をもつo-Acetylcarnitineの減少を示したが、L-カルニチンの添加によりこれらの変化が改善された。L-カルニチンの作用機序に関する新知見と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
臨床研究において、肝硬変に伴うミニマル肝性脳症の予測因子(バイマーカー)として血漿アンモニア濃度および血清アシルカルニチン/総カルニチン比の二つが有力な候補であることが明らかとなった。このことは本研究においてL-カルニチン投与がミニマル肝性脳症を改善する可能性を示唆する結果と考えており、今後の成果を期待している。L-カルニチン投与による臨床試験において症例の登録が若干遅れていることが唯一の課題である。一方、基礎的研究では、メタボローム解析という新たな手法により、アンモニアによる正常ヒトアストロサイトに対する障害作用がL-カルニチンによってキャンセルされるという新たな知見を得た。現在、論文化に向けて準備中である。
平成27年度中に臨床研究をさらに推進し、L-カルニチン療法のミニマル肝性脳症および高アンモニア血症に対する有効性を明らかにする。
予算に計上した学会旅費を使用しなかったために生じたものである。
最終年度に学会旅費または英文校正費用の一部として使用する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
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