研究課題
肥満糖尿病Ob/Obマウスに高脂肪食を負荷すると同時に拘束ストレス、あるいは中枢性CRFを投与することで、脂肪肝に与える影響に違いが生じるか対照群と比較したが有意な差がでなかったことから、本年度はストレス負荷で活性化される交感神経α受容体およびβ受容体の作動薬であるフェニレフリンおよびイソプロテレノールを用いて以下の検討を行った。6週齢雄性Ob/Obマウスを高脂肪食群および対照食群の2群にわけ、それぞれ交感神経α受容体刺激剤フェニレフリンおよびβ受容体刺激剤であるイソプロテレノールを充填したポンプをマウス背側皮下に留置し、1週間後より高脂肪食および対照食を開始し、その後4週間にわたり摂食させた。摂食終了後犠死させ血液、肝および精巣上体脂肪を採取した。肝を取り出し、組織学的に脂肪肝を評価し、肝中性脂肪を定量し、血清肝酵素を測定した。さらに肝脂質代謝に及ぼす影響に関して脂質代謝関連遺伝子の発現に関して検討した。高脂肪食を投与することにより肝脂肪沈着が出現し、肝中性脂肪量が明らかに増加した。フェニレフリンを投与すると高脂肪食による肝脂肪沈着は軽減し、肝中性脂肪量も減少した。一方イソプロテレノールを投与すると高脂肪食による肝脂肪沈着は増加し、肝中性脂肪量は増加した。以上のことからストレス負荷時には交感神経α受容体が賦活化されれば、高脂肪食による脂肪肝は軽減し、β受容体が賦活化されれば、脂肪肝は増悪する可能性が示唆された。
3: やや遅れている
肥満糖尿病Ob/Obマウスに高脂肪食を負荷すると同時に拘束ストレス、あるいは中枢性CRFを投与することで、慢性ストレスモデルを構築できると考えていたが、ストレス馴化の問題があり、今年度はストレスにより活性化される交感神経系にターゲットをしぼった。このため当初今年度以降実験を予定していた、中枢性CRF受容体拮抗薬および交感神経遮断薬投与を拘束ストレスモデルに応用する実験の遂行ができておらず、研究の遂行に遅れを生じているものと考えられる。
ストレス負荷時には交感神経α受容体が賦活化されれば、高脂肪食による脂肪肝は軽減し、β受容体が賦活化されれば、脂肪肝は増悪する可能性があることから、今後は実験によって得られた肝よりRNAを抽出し、cDNA Reverse Transcriptionキットを用いてcDNAに逆転写しWhole mouse genome CGHマイクロアレイを行いマイクロアレイを行い、パスウエイ解析を行い、交感神経α受容体およびβ受容体が、NASHにおける肝脂質代謝に影響を及ぼしている分子の検索を行う。さらに高脂肪食の投与期間の延長を行い、脂肪肝だけでなく肝炎症細胞や肝線維化を発症させた際の肝線維化関連分子や蛋白の動態を検討していく予定である。
当初の実験計画ではマイクロアレイを施行する予定であったが、実験予定の遅れにより当該年度に使用予定であった、マイクロアレイ用試薬の購入を見送ったため。
脂肪肝が交感神経α受容体およびβ受容体が賦活化された状況下で肝を採取し、RNAを抽出し、マイクロアレイ用試薬を購入した上で、使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件)
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