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2013 年度 実施状況報告書

慢性肝疾患における肝細胞障害と肝内凝固亢進状態の関連性に関する検討

研究課題

研究課題/領域番号 25461016
研究種目

基盤研究(C)

研究機関兵庫医科大学

研究代表者

西口 修平  兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10192246)

研究分担者 筒井 ひろ子  兵庫医科大学, 医学部, 教授 (40236914)
榎本 平之  兵庫医科大学, 医学部, 講師 (40449880)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード凝固亢進 / 肝障害 / 肝線維化
研究概要

本年度は、慢性肝炎急性増悪期、肝硬変の非代償期への移行時期の血液サンプルの採取、可能な症例においては肝生検組織の採取を行い、凝固因子の動態について検討した。その結果、線維化の進行とともにフォンウィルブランド因子(vWF-Ag)は有意に増加した。さらに、ALT高値例において、vWF-Agの高値例が認められた。さらに、少数例ではあるが他の凝固因子も測定した。TATの増加が認められた症例は5/22であり、プロトロンビンフラグメントF1+2は1/22に高値を認め、プロテインCは4/22、プロテインSは9/22例に低値を認めた。これらの結果から、肝細胞障害時においては凝固亢進状態に陥っている可能性が示唆された。ただし、それぞれのマーカーが連動して動いている症例はまれであり、生体内で凝固因子系の暴走に対する多重の制御機構が働いている結果と推測できた。
今回検討した全症例はFibroscan やAPRIなどの他の線維化診断マーカーを用いて肝硬度を測定し、一部の症例は肝生検を行った。vWF-AgはAPRIなどの他の線維化診断マーカーと弱い正の相関性が示された。また、造影超音波による門脈血流量および流速の測定法を確立した。肝組織内の微小血栓の存在により門脈血流量や流速を造影超音波・ドップラー法を用いて計測が可能であった。測定は、Philips iU22の専用解析ソフトQLABを使用しTICを解析し、肝内の関心領域の血流量を解析し、最高輝度に達するまでの時間をTime to Peakを指標として用いた。併せて、脈管系における血栓の有無を検索したが、今回、測定した症例には大血管内の血栓は存在しなかった。
今後はこの結果を踏まえ、さらに多数例での検討を行っていることと、一部の症例についてはその時期の肝生検サンプルを用いた免疫染色を開始している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

造影超音波による門脈血流量および流速の測定法を確立できたことは、大きな成果である。しかし、大きな血栓は検出できるが今回問題にするような肝小葉内血栓は、当初の予測通りこの機器では検出感度以下であった。
一方、血液マーカーにおいて、慢性肝炎や肝硬変症例においても凝固亢進の病態が存在することが明らかになり、急性増悪との関連が示唆されたことは大きな成果である。しかし、当初予測していたよりも凝固因子に異常をきたす症例はかなり限定されることが明らかとなった。すなわち、ALT値でいえば300IU以上の高度の異常例でないと凝固亢進状態に至らないため、当初予定していた症例数を確保できていない。また、肝硬変において肝壊死が進行し肝不全に陥る時期にも過凝固状態に陥り、病態の進展に影響を及ぼすと推測できるが、このような症例も比較的まれである。さらに、これらの病態に陥っている症例では、肝生検のリスクが高いため、実臨床において組織学的な検討も行い難いことも判明した。

今後の研究の推進方策

慢性肝炎の急性増悪期や肝硬変の非代償化の時期、すなわち肝臓の壊死が比較的大きく生じる時期には、過凝固状態が生じており、本来は免疫反応で始まった肝細胞壊死が広範な領域の肝壊死につながる可能性が示唆された。今後の検討としては、過凝固状態が生じている臨床的な病像を明確にするために、ALTの低値例、肝硬変の代償期の症例、肝癌合併例も含めて、以下の検討を行う。①血液を用いた凝固異常の検索:AT-3, PT、Fibriogen, FDP, Dダイマー、ADAMTS 13活性およびそのインヒビターなどを測定する。さらに、血小板機能の評価のために、血小板凝集能、PA-IgG,網状血小板、トロンボポイエチン濃度を測定する。②サイトカインやケモカイン定量:ELISAキットを用いて血中のサイトカインやケモカイン濃度を定量する。組織中のサイトカインやケモカインの多数因子をMultiPlex®を用いて同時解析する。③肝組織におけるフィブリンの検索:免疫組織学的検討により肝組織のフィブリン沈着を検索する。

次年度の研究費の使用計画

研究対象となる血液サンプルの収集を行なったが、ALT高値例が少数であり、凝固因子の測定も予想より少なかった。
血液サンプルが蓄積され、凝固因子も昨年度に加え、数種類多く測定する予定である。
各種抗体を用いた免疫染色やケモカインなどの測定を予定しており、抗体やELISA測定キットなどの購入を計画しているため、昨年度と異なり、多額の消耗品費が必要となると考えている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Importance of kupffer cells in the development of acute liver injuries in mice2014

    • 著者名/発表者名
      Tsutsui H, Nishiguchi S
    • 雑誌名

      Int J Mol Sci

      巻: 15 ページ: 7711-30

    • DOI

      10.3390/ijms15057711.

    • 査読あり

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公開日: 2015-05-28  

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