研究実績の概要 |
自己免疫性肝炎(AIH)11例、NASH8例、B型肝疾患(HBV)15例、C型肝疾患(HCV)27例を対象に、血漿のフォン・ウィルブランド因子抗原定量(vWF)、トロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体(TAT)、プロトロンビンフラグメントF1+2、プロテインC(PC)、プロテインS抗原量(PS)を測定し、肝組織のvWF、PAI-1、Fibrinogenの発現について免疫染色を行い検討した。その結果、vWFはAIH, HBV, HCVにおいて7/11, 8/15, 14/27で高値であったが、NASHでは4/8で低値であった。TATはそれぞれ3/11, 3/15, 4/27, 2/8に高値で、PCは2/11, 6/11, 10/27, 0/8、PSは1/11, 3/11, 9/27, 0/8で低値であった。vWFはNASHでは他の3群に比し、有意に低値であり、AIHが最も高値であり、HBV, HCVにおいてはALTの急性増悪時や慢性肝不全の症例で高値となった。肝組織の免疫染色は血液データと必ずしも一致しないが、vWF、PAI-1は類洞に染色された。この結果から、肝障害時には凝固亢進状態に陥っており、vWF高値、PC, PS低値から微小血栓が形成されやすい状況が存在し、TAT, F1+2の成績から一部の症例においてトロンビンが過剰産生されていることが明らかとなった。過凝固状態と微小血栓形成が肝障害の増悪に関連していることが、臨床例に於いても実証された。
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今後の研究の推進方策 |
今回の検討は、血漿のvWF, TAT, F1+F2, PC, PS, 肝組織のvWF、PAI-1、Fibrinogenの検討に限られており、複雑な凝固線溶系の 異常の全貌が解明されたわけではない。現在、論文化を企画しており、それに際し不足している成績を追加していく予定である。
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