研究実績の概要 |
GFP cDNAを遺伝子導入した肝癌細胞を接種して作成した腫瘍からセルソーターにて採取した血管内皮細胞(血管内皮幹/前駆細胞も含む)と、非癌部肝組織から採取した血管内皮細胞の血管新生に関連しているmRNA, マイクロRNAと比較した。その結果、血管新生に関与する12個のmRNAが腫瘍由来の血管内皮細胞で発現が亢進していた。さらに、3個のマイクロRNA(miR-127-3p,miR-379-5p, miR-711)が腫瘍由来の血管内皮細胞で非癌部肝組織由来の内皮細胞に比べて発現が亢進し(x1.65-1.91)、70個が低下していた。平成26年度は発現が亢進しているマイクロRNAに対するanti-マイクロRNAを作成して培養内皮細胞に投与するも増殖抑制効果が得られなかったため、今回は腫瘍由来の血管内皮細胞で非癌部肝組織由来の内皮細胞に比べて1:52.8と最も発現が低下しているmiR30a-5pを非癌部肝組織から採取した培養内皮細胞と腫瘍から採取した培養内皮細胞に添加した。その結果、非癌部肝組織から採取した培養内皮細胞では細胞増殖は抑制されなかったが、腫瘍から採取した培養内皮細胞ではmiR30a-5pを添加した群で有意に増殖が非癌部肝組織から採取した培養内皮細胞の増殖能と同等まで抑制された。次に、ヒト肝癌細胞をヌードマウスの肝臓に接種した担癌マウスの尾静脈からmiR30a-5pをリポゾーム法で週1回とうよした。その結果、4週間後の腫瘍容積は、無治療群が756±378 mm3であったのに対し、治療群では439±134 mm3と腫瘍の増殖を抑制した。組織を検討すると、腫瘍内の血管密度は対照群と比べて減少していたが、非癌部肝組織の類洞密度は対照群と変化がなかった。コリン欠乏アミノ酸食投与マウスに対し同様の検討を行ったが、腫瘍容積にばらつきが多く有意な抗腫瘍効果は得られなかった。
|