研究課題
膵臓癌はPanINおよび嚢胞性病変のIPMN・MCNの形態的に異なる前癌病変から発生すると考えられている。IPMN由来膵癌はPanIN由来膵癌に比べると比較的に予後が良いことから、両者は生物学的に異なると考えられてきたが、特にIPMN由来膵癌についてはその発生の分子機構は未だ十分に分かっていない。エピジェネティックスによる遺伝子発現制御が癌化に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。なかでもクロマチンリモデリングに重要な働きをするSWI/SNF複合体は、近年ヒトの様々な癌種において、その構成成分のinactivating mutationsが多数報告されていることから、癌化に関わることが強く示唆される。膵臓癌に関しては、SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体のなかのcatalytic ATPase サブユニットであるBrg1と、DNA結合蛋白であるARID1a、ARID2において不活化の遺伝子変異があることが報告された。また興味深いことに、ヒトIPMN標本の約半数においてBrg1の発現が低下または消失していることが2012年に報告された。しかしながら、クロマチンリモデリング因子が膵臓癌の発生・進行にどのような働きをしているかについては未だ明らかでなかった。本研究では、 SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体のcatalytic ATPase サブユニットとして必須因子であるBrg1に焦点を当て、膵臓癌の発生・進行におけるBrg1の機能的役割を明らかにすることを目的とした。本研究により、Brg1が膵臓で活性化Kras下においてin vivoで癌抑制遺伝子としてはたらき、IPMNおよびIPMN由来膵癌の発生を抑制していることが明らかになった。本研究内容は、Nature Cell Biology 2014; 16;255-67に論文発表した。
2: おおむね順調に進展している
研究内容をNature Cell Biology 2014; 16;255-67に論文発表することが出来たため。
IPMN形成を抑制する分子メカニズムについて、さらなる研究をすすめていく。
H27年度の物品費、マウスの飼育・維持費により多くの支出が見込まれたため、H27年度に使用することとした。
H27年度のマウスの飼育・維持費に主に使用する予定である。
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J Hepatobiliary Pancreatic Sci
巻: in press ページ: in press
Nature Cell Biology
巻: 16 ページ: 255-267
10.1038/ncb2916.