研究課題
基盤研究(C)
我々は膵癌細胞の浸潤・転移を抑制する分子としてbinder of Arl Two (BART)を同定し、BARTは低分子量G タンパク質Rac1活性を直接抑制することを明らかにした。本研究の目的は、BARTが認識するRac1および過去に報告されたBART結合性低分子量G タンパク質ARL2の両者との結合部位のアミノ酸配列を同定することである。研究期間内に以下の実験を行い、上述の命題について明らかにしていく。「Rac1およびARL2それぞれの全アミノ酸配列に対し、N末から約30アミノ酸毎にGST融合タンパクを作成する。BART、ARL2、Rac1のすべてを発現している膵癌細胞株S2-013のライセートを用いてGSTプルダウンを行う。同定されたBARTとの結合部位を含むRac1およびARL2由来の領域を比較し、推察される結合部位に対するペプチドを合成する。再び合成したペプチドとともにGSTプルダウンを行い、ペプチドがBARTとRac1およびARL2との結合を阻害するかを解析する。」当該年度内に施行を予定した実験は、ほぼ予定通りに行われている。
2: おおむね順調に進展している
BARTの特異的なGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)機構を明らかにするためには、BARTと結合する低分子量 G タンパク質内の特異的結合部位を同定する必要があると考えた。【1、Rac1およびARL2由来GST融合タンパクの作成】GST融合蛋白質発現用ベクターPGEX-6PへRac1およびARL2それぞれの全アミノ酸配列に対し、N末から約30アミノ酸毎に相当するDNA断片を膵癌細胞株S2-013からサブクローニングした。大腸菌でGST融合タンパク質を発現させ、Glutathione Sepharose 4Bを用いて大腸菌由来タンパク質を除去し、GST融合タンパク質を精製した。【2、GSTプルダウン】S2-013のライセートと精製したRac1およびARL2由来GST融合タンパクを混ぜ合わせて、S2-013に発現している内在性BARTと結合するアミノ酸配列を持ったGST融合タンパクをプルダウンする。市販の抗BART抗体を用いてウエスタンブロット法によりBARTが共沈することを確認した。
【BARTとRac1およびARL2との結合を阻害するペプチドの作成】膵癌細胞内在性BARTと結合する部位を含む30アミノ酸から成るRac1およびARL2由来GST融合タンパクのアミノ酸配列を比較する。共通するアミノ酸配列があれば、その部位に相当するペプチドを合成する。ペプチドのN末に11個のアルギニンを付加して、ペプチドを膵癌細胞の細胞膜を通過して細胞内に入れるようにする。まず、in vitroでペプチドの結合阻害作用を検討する。合成したペプチドを添加して、前述したGSTプルダウン実験を行い、ペプチドが膵癌細胞内在性BARTとRac1およびARL2との結合を阻害することを確認する。
リコンビナント蛋白質とGST-プルダウン実験の経費が予想より下回ったため次年度使用額が生じた。平成25年度支給額の残額を同定したペプチドの合成費用に使用する予定である。平成26年度支給額については、in vitroおよび膵癌細胞を用いたペプチドの結合阻害実験を行う予定である。
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