研究課題/領域番号 |
25461024
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
嶋本 正弥 九州大学, 大学病院, 助教 (00457433)
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研究分担者 |
水元 一博 九州大学, 大学病院, 准教授 (90253418)
坂井 寛 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (80611665)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 膵癌 / 腫瘍血管 / 間質 / ペリサイト / ペリサイト |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、膵癌の治療抵抗性の一つである乏血性に注目し、腫瘍血管の機能異常を正常化することで薬剤到達率の向上を計り、治療の有効性を高めることである。本研究では腫瘍血管の構成要素の一つであるペリサイトに注目し、腫瘍血管における機能や血管新生時における役割を解析し、ペリサイトの正常化により血管の安定性を回復させることを目標としている。 本年度は、膵癌における血管の脆弱性が、膵癌の豊富な間質増生によってもたらされている可能性について、間質増生において中心的な役割を果たしている膵星細胞に焦点を絞り、間質増生の制御が血管の安定性向上に与える影響について検討を行った。 膵癌の間質をターゲットとした間質制御については、ヒアルロン酸分解酵素やヘッジホッグ阻害剤などが有効であるとする報告がなされているが、未だ実臨床において実用化されていない。我々は、肝臓における線維化に肝星細胞のCD51が関与するとの報告を元に、膵星細胞におけるCD51制御が間質を抑制できるとの仮説を立て検証を行った。 免疫組織化学染色では、膵癌組織において、CD51は間質に広く発現することを確認した。膵星細胞のCD51をRNA干渉によって発現抑制を行うと、膵星細胞の遊走および増殖能は低下した。さらに、CD51を抑制した膵星細胞においては、コラーゲンⅠやフィブロネクチンといった細胞外基質の産生が低下していることが確認できた。このことは、CD51が膵癌の間質制御において新たな標的となりうることを示し、血管の正常化にとって非常に意義のある結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、ペリサイトおよび腫瘍血管の周囲に存在する間質について、膵星細胞のCD51をターゲットとすることで制御できる可能性について示したが、実際にペリサイトおよび周囲血管への影響については、これから検討を加える予定である。さらに、正常血管構築を制御するペリサイトの因子についての検討が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、膵星細胞におけるCD51をターゲットとした膵癌間質の制御によるペリサイト(腫瘍血管)への影響について、マウスモデルを用いて検討するとともに、ペリサイト自体の血管構築正常化に向けた標的を明らかにし、治療への応用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに使用できたが端数のみ残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬類、抗体、リボ核酸干渉・遺伝子強制発現、実験用マウス、実験用ガラス器具、人件費、研究成果発表費、論文投稿料
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