研究課題
基盤研究(C)
本研究は、膵臓腺房細胞のチモーゲン顆粒膜に特異的に発現するタンパク質Glycoprotein 2 (GP2) が消化器系細胞においてどのような役割を果たしているのかを明らかにするとともに、細胞内のオートファジー機構に関連があるのか、関連があるのであれば、その調節メカニズムを解明することに焦点を当てている。本年度においては、c57BL/6マウス(WTマウス)におけるGP2発現をmRNAレベルおよびタンパク質レベルで検出を行ったところ、平常状態でもある程度のGP2発現が確認された。さらに、膵臓外分泌変動モデルを構築するため、18時間絶食を行い、膵臓のホモジェネートを用いて膵臓外分泌酵素のほとんどを占めるアミラーゼ量の測定を行ったところ、アミラーゼの分泌は、絶食後に低下を示した。そこで、GP2遺伝子欠損マウスを用いて同様に18時間絶食を行うと、WTマウスで観察された絶食後のアミラーゼ分泌の抑制が見られなかった。また、採取した膵臓組織を4%PFA/PBSにより固定し、パラフィン切片を作成した。一般染色としてHE染色およびギムザ染色を行ったところ、両マウスにおいて絶食により腺房細胞が腫大する傾向にあり、導管が偏向し細くなっているように観察された。また、、抗アミラーゼ抗体による免疫組織学的染色でのアミラーゼ陽性率は、アミラーゼ定量法と同様に、絶食後のGP2遺伝子欠損マウスで維持されていた。これより、GP2が膵臓外分泌系においてなんらかの役割を示すことが示唆される結果となった。
3: やや遅れている
絶食による膵臓外分泌変動モデルを安定して作成することができるようになってきているが、膵臓にはタンパク質分解酵素が多く存在するため、臓器採取時間が結果に影響してしまう可能性があり、作業時間や温度設定等を検討するのに時間を要したという点が挙げられるが、現在、最も適した条件に絞られつつある。また、研究代表者の個人的事情として、出産に伴う休暇により、一時実験が停止しており、研究の遂行に多少の遅れが生じたことも理由の一つとして考えられる。
GP2ノックアウトマウスを用いて、GP2のオートファジー機能への関連を解明する。GP2が消化酵素の産生から分泌までの過程でなんらかの関連があることが明らかとなったため、飢餓状態時に中心的な役割をするオートファジー関連分子の発現動態を検証する。関連する各種の負荷を加え消化酵素産生に誘導をかけた状態で検討を行う。GP2ノックアウトマウスおよび野生型マウス膵臓のオートファジー関連遺伝子群、特にオートファゴソーム膜形成に関連する遺伝子群のmRNAの発現を定量比較する。本年度の進行具合にによってはオートファジー経路のどのステップをGP2が調節するのかを明らかすることを検討事項に加える。さらにユビキチン化などの翻訳後修飾との関連にも着目する。
実験動物の安定的作製の条件決めに時間を要したこと、さらに、出産に伴う業務停止期間があったため、当初予定していた実験計画を一部遂行できなかったことによる。次年度は、オートファジー関連分子の発現動態を検証する予定であるので、消化酵素関連試薬、GP2ノックアウトマウスの維持、および遺伝子発現試薬にあてるつもりである。
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