研究課題/領域番号 |
25461027
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
石渡 俊行 日本医科大学, 医学部, 准教授 (90203041)
|
研究分担者 |
松田 陽子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), その他部局等, 研究員 (20363187)
松下 晃 日本医科大学, 医学部, 助教 (70449263)
進士 誠一 日本医科大学, 医学部, 助教 (80409193)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | Nestin / 膵癌 / microRNA / 分子標的治療 |
研究概要 |
膵癌は5年生存率が約5%と極めて予後不良な悪性腫瘍で、新規治療法の開発が切望されている。Nestinは、神経上皮幹細胞で発現が報告されたclass VIに分類される中間径フィラメントで、膵臓においても外分泌系の前駆細胞に発現している。 現在までにnestinが膵癌の浸潤、転移や癌幹細胞性の維持に深く関与しており、nestinを抑制することが難治性の癌である膵癌の治療に結び付く可能性があることを明らかにした。しかし、膵癌においてnestinの発現を制御する経路や機序についての研究は進んでいない。近年注目されている、遺伝子発現を抑制する内在性の低分子RNAであるmicroRNA (miRNA)による膵癌治療法の可能性を解明する目的で、nestin発現を抑制するmiRNAを探索した。 Nestinは膵癌の癌幹細胞性を制御することが明らかとなっているため、まず、膵癌の幹細胞に関連するmiRNAの同定を試みた。現在までに1600種類以上のヒトmiRNA precursorが報告されており、その内でも特に主要な1190種を選択しているPre-miR miRNA Library (Ambion社)を用いて、スフェア形成能を制御するmiRNAのスクリーニングを行った。スフェア形成能は、低接着性ディッシュで癌細胞を培養し、癌幹細胞の主要な特徴である自己複製能を検討するために用いられている方法であり、その結果、著明にスフェア形成能を抑制するmiRNAとスフェア形成能を促進させるmiRNAを同定した。スフェア形成能を制御するmiRNAによるnestinの抑制効果をreal-time PCRで確認するとともに、同定されたmiRNAの膵癌組織における発現や臨床病理学的因子との関係の検討、in vitroでの機能の検討を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画よりもスフェア形成能を制御するmiRNAのスクリーニングが早く終了したため、平成26年度実施予定であったnestin抑制性miRNAの抗腫瘍効果を検討するin vitroの実験の一部を開始した。予算についても平成26年度予定額の一部を前倒しで支払請求、受領して研究を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度には同定されたnestinを抑制するmiRNAの抗腫瘍効果のin vitroでの検討を続ける。Nestin抑制性miRNAをnestinの発現が高い膵癌細胞に遺伝子導入し、細胞形態、増殖能、遊走能、浸潤能、接着能、癌幹細胞に与える影響を検討する。 平成27年度は将来の臨床応用を見据え、nestinを標的とする合成miRNAをin vivo投与することにより膵癌の治療効果が示されるかを検討する。ヒト膵癌細胞をNOD/Shi-scid, IL-2γnull (NOG)マウスの皮下に移植し、nestin抑制性miRNA及び陰性対照miRNAを腫瘍内に投与する。その後、腫瘍の大きさを経時的に観察し、nestinを標的とするmiRNAの抗腫瘍効果を明らかにする。さらに、より臨床に近似した状態を作成するため、マウス同所移植モデルにおいても検討する。ルシフェラーゼ遺伝子を導入した膵癌細胞株をNOGマウスの膵臓に移植する。その後、nestinの発現を抑制するmiRNAを尾静脈内投与する。 腫瘍の大きさや転移の状況は、in vivo蛍光イメージング装置を用いて経時的に観察する。一定期間観察後、腫瘍、全身諸臓器のサンプルを採取し、nestin抑制性miRNA投与の癌細胞浸潤、転移に及ぼす影響、及び副作用を肉眼的、組織学的に検討する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初計画よりもスフェア形成能を抑制するmiRNAのスクリーニングが早く終了し、平成26年度実施予定であったnestin抑制性miRNAの抗腫瘍効果を検討するin vitroの実験の一部を開始したため前倒し支払請求を希望した。 平成26年度に実施予定であった、実験系の一部を既に開始している状況であるため、平成26年度に請求する金額は減額するものの、研究遂行する上では大きな問題はない。また、平成27年度の計画は、現在のところ変更を予定しておらず、当初の研究目的の達成を目指す。
|