研究課題
UICCーT3、T4の局所進行膵癌に対して、gemcitabine(GEM)を用いた化学放射線療法(GEM-CRT)を2005年2月から130例以上に施行している。このうち治療前のEUS-FNAB検体を用いた免疫組織染色にてhENT1発現を検討し得た51例(UICC-T3:28例、T4:23例)を対象に、治療前のhENT1発現とGEM-CRTとの治療効果を検討したところ、hENT1陽性の切除例は。生存期間中央値(MST)が30ヶ月以上と著明な延長を示していたのに対して、hEENT1陰性の切除例では約9ヶ月のMSTであった。すなわち、膵切除を施行したにもかかわらず、非切除例とほぼ同等の成績であり、この成績を発表した(Pancreas. 2016 45: 761-71)。また2011年以後は膵癌に対するSー1の効果が明らかとなったため、GEM/S-1 CRTを120例以上に施行しているが、このGS-CRT症例においても、治療前のEUS-FNAB検体を用いたhENT1発現の検討を行い、さらにdihydropyrimidine dehydrogenase (DPD)発現についても検討した。EUS-FNAB検体は、膵癌診断にもちいた残りの検体を使用した。hENT1とDPDはそれぞれ79.2% (76/95), 61.1% (58/95)で評価可能であった。hENT1は67.1% (51/76)が陽性であり、DPDは27.6% (16/58)が陽性であった。hENT1陽性例はMST25ヶ月と陰性例の14ヶ月に比べて有意に予後延長しており、またDPDにおいても陰性例は陽性例に比して有意に予後延長していた(MST: 33ヶ月vs. 14ヶ月)。さらに生存率に寄与する因子を多変量解析にて検討したところ、hENT1とDPDのみが有意な因子であり、GS-CRT症例においても、治療開始前のEUS-FNAB検体を用いた抗癌剤耐性遺伝子発現の検討の有用性を証明し得た。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Pancreas
巻: 45 ページ: 761-71
10.1097/MPA.0000000000000597.