研究概要 |
本研究の目的は白血球Rho-kinase活性を用いて、VSA患者におけるRho-kinase活性の日内変動の有無、及びメカニズムを明らかにすることである。当科に胸痛精査目的に入院し、心臓カテーテル検査時にアセチルコリン(ACh)による冠攣縮誘発試験を施行した連続49症例に対し、白血球Rho-kinase活性を1日3回(12時、21時、6時)測定した。誘発試験が陽性のVSA群31例と、陰性の胸痛症候群18例を対照群とし、両群における白血球Rho-kinase活性の日内変動を比較、検討した。また、Rho-kinase活性と冠動脈の収縮反応性、及び心拍変動解析により算出した自律神経活性指標との相関を検討した。VSA群の自然発作の好発時間帯は24時-8時にピークを認めた。VSA群のRho-kinase活性は6時に最高値を示し、対照群と比較して有意に高値であった(VSA群 1.17±0.17 vs. 対照群 0.92±0.22, P<0.001)。また、両群間のRho-kinase活性の変動は有意に異なっていた(P<0.01)。VSA群における冠攣縮誘発試験時の白血球Rho-kinase活性は、冠動脈のbasal toneと相関し(r=0.40, P<0.05)、ACh負荷に対する血管収縮反応と有意な相関を認めた(r=0.44, P<0.05)。自律神経活性指標は両群間で有意差を認めなかったが、VSA群における6時のRho-kinase活性は深夜から早朝の副交感神経活性と正の相関を認め(r=0.48, P<0.05)、交感神経活性と負の相関を認めた(r=-0.51, P<0.05)。一方、対照群ではRhoキナーゼ活性と自律神経活性指標との間に有意な相関は認めなかった。以上より、VSA患者のRho-kinase活性には好発時間帯と同様に、早朝をピークとする日内変動が存在し、冠動脈の収縮刺激に対する反応性や自律神経活性の変化と関連し、VSA発作の日内変動に関与する可能性が示唆された。
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