研究実績の概要 |
前年度までに我々は冠攣縮性狭心症(VSA)患者においてRhoキナーゼ活性は早朝に高い日内変動を有しており、冠動脈造影により評価した冠動脈の基礎トーヌス、アセチルコリンに対する収縮反応性と有意な相関があることを明らかにした。またRhoキナーゼ活性はVSA患者においてホルター心電図で評価した副交感神経活性と正の相関示した。以上の研究結果をまとめCirculation Journal誌に投稿し、Nihei T, Takahashi J, Tsuburaya R, Ito Y, Shiroto T, Hao K, Takagi Y, Matsumoto Y, Nakayama M, Miyata S, Sakata Y, Ito K, Shimokawa H. Circadian variation of Rho-kinase activity in circulating leukocytes of patients with vasospastic angina. Circ J. 2014;78(5):1183-90. に掲載された。さらにRhoキナーゼの長期予後の予測能を日内変動を調べた症例も含め胸痛を主訴に冠攣縮誘発試験を施行した連続195例を対象に検討した。平均13ヶ月の観察期間中に、VSA群8例(5.3%)で複合心イベントを認めたが、胸痛症候群では認めなかった。イベント発症例(n=8)はイベント非発症例(n=142)よりも有意にRhoキナーゼ活性が高値だった(1.34±0.13 vs. 1.21±0.36, P<0.05)。 さらにVSA群をRhoキナーゼ活性の中央値で2群に分類すると、高値群(p-MBS/t-MBS ≧1.21)は低値群や胸痛症候群と比較し有意にイベント発生率が高かった(P<0.05) 。VSA患者のRhoキナーゼ活性は長期予後予測に有用である可能性が示唆された。
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