研究課題/領域番号 |
25461045
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
笹野 哲郎 東京医科歯科大学, 保健衛生学研究科, 准教授 (00466898)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心房圧負荷 / 細胞外ATP / pannexin / 線維化 / 炎症性サイトカイン |
研究概要 |
横行大動脈縮窄(Transverse aortic constriction; TAC)による心房圧負荷モデルを作成し、心房性不整脈の発生とそのメカニズムについて検討した。また、圧負荷がpannexinチャネルを開口し、細胞外にATPを放出して炎症を惹起することを先行研究によって明らかにしていたため、Pannexin-1ノックアウトマウスを用いて細胞外ATP放出との関連を検討した。 1. 心房圧負荷モデルの経時的解析:TAC術による心房圧負荷モデルマウスを経時的に解析し、マクロファージ浸潤はTAC術1日後から見られ経時的に増加すること、IL-1, IL-6等の炎症性サイトカイン産生はTAC術3日後から有意に上昇し、5日後をピークしてその後低下することが明らかとなった。線維化シグナルおよびコラーゲン線維の沈着はTAC術5日後より出現し経時的に増加していた。 2. 大動脈狭窄-解除モデルの作成:TAC術を行った後狭窄を解除し、圧負荷を解除するモデルを作成した。その結果、TAC術後初期に狭窄を解除するとその後の線維化の進行は抑制されたが、TAC術から長時間経過した後に狭窄解除を行っても線維化の進行には変化がないことが明らかとなった。 3. Pannexin-1ノックアウトマウス(KO)および野生型(WT)マウスを用いて虚血再灌流モデルを作成し、虚血再灌流による心筋傷害の程度、および虚血時・再灌流時の不整脈、についての評価を行った。その結果、Pannexin-1ノックアウトマウスは虚血再灌流時の心筋傷害が大きかったものの、虚血時・再灌流時の不整脈はいずれも低頻度であった。また、KOおよびWTより心臓を摘出し、ランゲンドルフ灌流下で低酸素刺激を加えると一過性にATPが放出されること、KOおよびWTから単離した心筋細胞を低酸素環境で培養すると細胞外にATPを放出することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は圧負荷モデルはすでに確立しており、さらにTAC術を用いた大動脈縮窄-解除のモデルも確立して、圧負荷における線維化シグナルが可逆性から非可逆性変化に転換するポイントを明らかにした。この過程で発現が変化する分子についてもある程度同定しており、あと2年間で包括的な解明に迫ることは可能と思われる。 また、前述の大動脈縮窄-解除モデルにおいてDnmt1トランスジェニックマウスを用いること、およびmicroRNAの網羅的解析を行うことにより、当初計画には記載していなかった新たな治療戦略の提案につながるアプローチも期待される。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、心房圧負荷モデルにおける炎症・線維化のメカニズムについての検討を進める。平成25年度の研究により心房圧負荷による線維化・催不整脈性シグナルは、圧負荷後一定の時間が経過すると非可逆的な変化となることが明らかとなった。この非可逆性に関与するメカニズムを明らかにする。 1. 非可逆的線維化シグナルにおけるDNAメチル化の関与を検討:TAC術後にはDnmt1の発現変化が見られることから、TAC術後の非可逆的な線維化シグナル増強にはDNAメチル化によるエピジェネティックな変化が関与していると考えられる。このため、A) TAC術モデルに対してDNAメチル化酵素阻害剤である5-AZAを投与するモデル、B) Dnmt1活性の低下するトランスジェニックマウスを用いたTAC術モデル、を作成して線維化シグナルを評価する。 2. 非可逆的線維化シグナルにおけるmicroRNAの関与を検討:TAC術前後での心房におけるmicroRNA発現を網羅的に解析し、A) 線維化シグナル分子を制御するmicroRNA、B) Dnmt1を制御するmicroRNA、に特に着目して発現変化を検討する。さらに、同定されたmicroRNAを発現ベクターに導入し、標的となる遺伝子の3’UTR領域をルシフェラーゼ発現ベクターに導入して今日発現させることにより、microRNAによる標的遺伝子の制御について評価する。 3. Pannexin-1ノックアウトマウスを用いた検討:虚血・低酸素刺激によってPannexin-1チャネルがATPを放出することが明らかとなったため、低圧低酸素飼育モデルにおいて心臓に伸展刺激と低酸素刺激を同時に与え、線維化・催不整脈性についての評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
事務手続きの関係上、一部の消耗品費の支払が4月になり、次年度の使用額として計上することとなったため。 事務手続き上のことであり、次年度の消耗品費として計上する。
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