研究課題/領域番号 |
25461047
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
塙 晴雄 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40282983)
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研究分担者 |
柏村 健 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (70419290)
小澤 拓也 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70467075)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心不全 / 肝うっ血 / 貧血 / 鉄欠乏 / ヘプシジン / BMP-6 / IL-6 / Toll様受容体 |
研究実績の概要 |
心不全では、貧血が多くみられ、貧血でなくとも鉄欠乏が生じることが知られている。しかし、その原因として様々な要因が考えられているが、その詳細はわかっていない。一方、鉄代謝の主要ホルモンとして、主に肝臓で産生されるヘプシジンが注目されている。我々は心不全でみられる肝うっ血が、ヘプシジンを介して貧血、鉄欠乏に関わっているのではないかとの仮説に基づき、今回いくつかの検討をした。はじめに肝うっ血モデルを作成し検討したところ、慢性期まで貧血、鉄欠乏が継続することが明らかになった。この機序としては、肝うっ血によって、肝内のヘモグロビンやフリーのヘムがデンジャーシグナルとなり、TLR-4を介して炎症性サイトカイン(IL-6など)を産生し、これがヘプシジンを不適切に産生する機序が考えられた。また、肝内鉄の上昇によって、BMP-6を介して同様にヘプシジンが不適切に産生される機序も推測された。これらのヘプシジンの不適切な産生は、心不全における貧血や鉄欠乏の要因になりうると考えられた。さらに、炎症や癌のない心不全症例の血中ヘプシジン濃度を測定したところ、肝うっ血のある症例で有意にヘプシジンの値が高く、一部の心不全症例の肝うっ血が貧血、鉄欠乏の要因となることが臨床例でも考えられた。右心不全から肝うっ血をきたす肺動脈性肺高血圧モデルであるモノクロタリン肺高血圧ラットでも貧血がみられ、右心不全の肝うっ血でも実験的に貧血が起こりうることが確認された。しかし、心不全によって引き起こされる可能性のある低酸素血症は、むしろヘプシジンの産生低下を引き起こすことから、心不全のヘプシジンの産生は、いくつかの要因によって影響されることも推測された。以上の結果は、J Cardiac Fail 2014, Tohoku J Exp Med 2015および日本心不全学会に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝静脈狭窄肝うっ血モデルおよび右心不全による肝うっ血モデルにおいて、貧血、鉄欠乏になりうることが証明できた。また臨床の心不全症例でもヘプシジンの不適切な産生が生じることを明らかにできた。心不全でみられる肝うっ血が貧血、鉄欠乏の要因になる可能性を証明できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今回の臨床症例は少数例での検討であった。さらに症例数を増やしてヘプシジンと貧血、鉄欠乏の関係を検討する予定である。また、鉄の投与よりもヘプシジンの産生低下を引き起こす薬剤が、このような貧血や鉄欠乏症例には有効と考えられる。その一つとして、エリスロフェロンが考えられており、これを産生するベクターを作成し、治療実験をしていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加臨床例での血液検査のための物品、試薬の購入、新たなベクター作成のための物品、試薬の購入、動物実験のための動物購入代および飼育費、情報収集と成果の公表のための学会参加のための旅費と参加費のため。
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次年度使用額の使用計画 |
血清分離、血清ヘプシジン測定の為の物品、試薬、ELISA kit代、プラスミドベクター作成の為の試薬代、プラスミドベクターを用いた遺伝子導入動物の作成代、および学会参加のための旅費と参加費代。
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