研究課題
心不全では、貧血が多くみられ、貧血でなくとも鉄欠乏が生じることが知られているが、その詳細はわかっていない。一方、鋏代謝の主要ホルモンとして、主に肝臓で産生されるヘブシジンが注目されている。我々は心不全でみられる肝うっ血が、ヘプシジンを介して貧血、鉄欠乏に関わっているのではないかとの仮脱に基づき、今回いくつかの検討をした。はじめに肝うっ血モデルを作成し、検討したところ、慢性期まで貧血、鉄欠乏が継続することが明らかになった。この機序としては、肝うっ血によって、肝内のヘモグロビンやフリーのヘムがデンジャーシグナルとなり、TLR-4を介して炎症性サイトカイン(IL-6など)を産生し、これがヘプシジンを不適切に産生する機序が考えられた。また、肝内鉄の上昇によってBMP-6を介して同様にヘブシジンが不適切に産生される機序も推測された。これらのヘプシジンの不適切な産生は、心不全における貧血や鉄欠乏の要因になりうると考えられた。さらに、炎症や癌のない心不全症例の血中ヘプシジン濃度を測定したところ、肝うっ血のある症例で有意にヘプシジンの値が高く、一部の心不全症例の肝うっ血が貧血、鋏欠乏の要因となることが臨床例でも考えられた。右心不全から肝うっ血をきたす肺動脈性肺高血圧モデルであるモノクロタリン肺高血圧ラットでも貧血がみられ、右心不全の肝うっ血でも実験的に貧血が起こりうることが確認された。しかし、心不全によって引き起こされる可能性のある低酸素血症は、むしろヘプシジンの産生低下を引き起こすことから、心不全のヘプシジン産生は、いくつかの要因によって影響されることも推測された。また、心臓自体でも各種心不全モデルで、様々にヘプシジンの発現が変化することが示された。以上の結果は、J Cardiac Fail 2014, Tohoku J Exp Med 2015および日本心不全学会、日本循環器学会で報告した。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
Tohoku J Exp Med.
巻: 235 ページ: 69-79
10.1620/tjem.235.69
Inflammation.
巻: 38 ページ: 2288-2299
10.1007/s10753-015-0214-1