研究課題
基盤研究(C)
虚血性心不全患者に対する自己脂肪組織由来間質細胞投与による心不全再生療法の安全性確認試験を2症例に対して実施した。それぞれ6ヶ月後まで経過観察を行い、安全性と若干の有効性の確認まで終了した。現在までに、細胞投与前から投与後6ヶ月までのサイトカインプロファイリングのための血清、包括的遺伝子発現解析用サンプルを採取保存完了した。今後、残り4症例の臨床試験を終了後、保存血清を用いて、プロテインアレイによるサイトカインプロファイリングと、cDNAマイクロアレイによる包括的遺伝子発現解析を実施する予定である。臨床所見からは、運動耐用能、酸素消費量、筋交感神経活動、左室拡張末期容量の改善を確認できており、保存サンプルの詳細な解析を行うことの有益性が示唆されている。動物実験においては、マウスの安定した脂肪由来の再生細胞の培養系が確立した。マウス心筋虚血モデルに対して、脂肪由来間質細胞を投与し、障害心筋における再生細胞の定着率と、トロポニンT、αSMA、CD34といった心筋細胞、平滑筋細胞、血管内皮様細胞への分化を確認した。現段階では、脂肪由来間質細胞群は、CD90やCD105といった幹細胞マーカー陽性細胞が多量に含まれていることを確認した。さらに、再生効率を上げるため、投与した細胞群の中で、どのキャラクターの細胞が、虚血性心筋障害に対する再生治療として、有効かを慎重に解析している。最も有効な細胞が、どの分画にあるかを今後、明らかにして臨床試験の結果と合わせて、より安全で、より効果的な再生医療の確立を目指していく。
2: おおむね順調に進展している
再生医療の安全性確認試験でのヒトサンプルを使用するため、症例の選定で難渋することが危惧されたが、現時点では順調に進んでいる。また、マウスの脂肪由来間質細胞の培養においても安定した系を確立することができており、来年度も順調に進むと判断している。
虚血性心不全症例に対する自己脂肪組織由来間質細胞を用いた再生医療に関する臨床研究のサンプル収集を終了後、速やかに遺伝子発現解析、サイトカインプロファイルの解析を進める。同時に、心筋虚血モデルマウスを用いた基礎研究においては、雑多な細胞集団である脂肪組織由来間質細胞の中で、どの細胞群が有益であるか更に、検討を続け、臨床試験の結果と合わせて、より安全で、より効果的な再生医療の確立を目指していく。
本年度中に再生医療の安全性確認試験を3症例実施予定でいたが、3症例目が適応外と判断されたため、来年度に4症例を実施することとなった。このため臨床サンプルも現時点では2症例分に減ったため次年度に繰り越すこととなった。来年度中に残りの再生医療安全性確認試験を実施し、解析用の臨床サンプル収集を終了し包括的遺伝子発現解析ならびにサイトカインアレイによる解析を開始する。間に合えば、国際学会で一回目の発表を予定する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Eur J Immunol
巻: 11 ページ: 2956-68