研究課題/領域番号 |
25461053
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 誠 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (70159911)
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研究分担者 |
小澤 友哉 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (20584395)
芦原 貴司 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80396259)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 特発性致死性心室性不整脈 / 遺伝性不整脈 / QT延長症候群 / Brugada症候群 / 特発性心室細動 / 画像診断 / 臨床心臓電気生理学的検査 / 3Dマッピング |
研究概要 |
遺伝性致死性心室性不整脈疾患(Brugada Syndrome (BrS),Long QT syndrome (LQTS),Catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia (CPVT),Andersen 症候群等)における,潜在的な器質的障害と局所的な電気的異常との関連性を検討する目的で,平成25年度は器質的障害の画像診断を行う.心エコー検査では通常のBモードエコーの他,組織ドプラー法を用いたspeckle tracking法などを用い詳細な壁運動異常の有無を検出する.更に,別の方法としてマルチスライス心臓CTおよび心臓MRI(ガドリニウム造影MRIを含む)を行い壁の菲薄化や肥大あるいは微少な線維化の局在につき検索する.〔心臓電気生理学的検査〕一般的な12 誘導心電図,負荷心電図,体表面加算平均心電図,ホルター心電図の他イベント心電図を記録する.心内膜電位の記録は通常の多電極マッピングに加え,electro-anatomical mapping 装置(CARTO-3あるいはNavx)も使用し,心室内の電気的異常につき詳細な検索を行う.また,当院の心血管造影室に現有するJonson & Jonson社製の心腔内エコー(Carto sound)を右房,右室に留置し心腔内エコーで左室,右室壁を観察し,心腔内電位記録部位のエコー輝度,壁運動異常などとの関係も解析する.心室プログラム刺激を行い,出現する不整脈につきその起源を心内膜マッピングならびにペースマッピングを併用し不整脈起源部位を探索し,同部位の電気的異常(電位波高の減高,fragmentaion, delayed potential等の存在,再分極時間の測定など)につき心腔内エコー上の異常につき検索する.更に不整脈起源に対しては高周波カテーテルアブレーションを行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は特発性致死性心室性不整脈症例に対して,心臓MRIおよびCT画像による器質的異常の有無につき検討した.画像診断を行った致死性心室性不整脈症例の内訳は特発性心室細動(IVF )3例,特発性心室頻拍(IVT)2例,Brugada症候群(BrS)3例,QT延長症候群(LQTS)1例の計9例(年齢14~67歳,平均年齢37歳,全員男性)であった.全例経胸壁心エコーでは明らかな異常は認めなかった.全員にガドリニウム造影MRIを施行した.Cine MRIでは右室壁,左室自由壁の壁運動は正常範囲であった.ガドリニウム造影のfirst pass imageでは造影効果不良域は明らかで無かった.またdelayed enhanced imageにおける遅延造影効果も明らかでなかった. 左室乳頭筋起源のIVTに対しては左室内の電位マッピングと心腔内エコーの同時記録を行った。左室前乳頭筋上でVT-QRSの直前にPurkinje電位が記録され、VTは左室乳頭筋のPurkinje networkが関与したものと推測した。術中の心腔内エコー画像では左室(前)乳頭筋に特に異常所見は認めなかった。Purkinje電位記録部位で高周波通電を行ったところ、通電直後にVTが誘発されたが、その後徐々にVTは持続しなくなり最終的にはisoproterenol投与下でもVTは出現しなくなりVT根治に成功した。心筋あるいはPurkinje線維の軽微な異常は、MRIやCT画像上には現れない可能性が推測される。また、心腔内エコー所見に関しては今後症例を集積して再検討をする必要がある。 平成25年度の研究結果としては、MRI画像を含めた検討が行えたこと、一部の症例ではあるが、心腔内電位マッピングと画像診断との対比ができたことから、おおむね順調に研究が進んでいると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
明らかな器質的心疾患のないいわゆる特発性致死性心室性不整脈は我々の施設だけでは症例数がまだまだ少ない。以前より遺伝子検索も行っているが、今回対象とした平成25年度の9症例内ではLQTS以外は遺伝子異常の特定はされていない。従って、遺伝子異常と画像診断や心腔内電位マッピングの異常に関して比較検討は行えていない現状である。今後は、遺伝子検索を更に進め、対象疾患も、右室流出路起源のIVTやverapamil感受性VTなどにも研究対象を広げ、心室内電位マッピングとMRI、CTあるいは心腔内エコー画像所見等との関連性につき研究を重ねる必要がある。
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