研究課題
平成25年度は心筋梗塞後の虚血性心不全発症にかかわるマイクロRNA候補を同定した。すなわち急性心筋梗塞慢性期の症例の血清において検討を行い、心筋梗塞後の虚血性心不全発症、および心血管死亡にp53関連のマイクロRNA(miRNA)が関与することを明らかにした。すなわち生存退院した急性心筋梗塞症例において、生存退院後1年以内に心不全を発症した症例ではmiRNA-34a,192,194(Circ Res 2013;113:322-6.)、早期に心血管死亡した症例ではmiRNA-380*の血清レベルが心血管事故に先行して生存退院時に既に上昇していることを明らかにした(Biochem Biophys Res Commun. 2012;427:280-4.)。さらに興味深いことに生存退院時のmiRNA-34aの血中レベルは1年後の左心室径と有意な相関を認めることも明らかにした(Circ Res 2013;113:322-6.,Circ Res 2013;113:e48-9.)。従来、心筋梗塞およぶ圧負荷モデルマウスにおいて心不全・心筋リモデリングの進展に腫瘍因子p53の活性化が関与することが示されており(Nature.2009;460:529-33.)、これらの結果は臨床例においてもその虚血性心不全発症にp53経路が関与することを明らかにする結果となった。平成26年は引き続きその機序に関する検討を行う予定であったが、主任研究者の大阪大学からの転出に伴い、平成26年度夏以降は予定していた検討が困難となった。そのため研究計画を変更し、大阪急性冠症候群研究会のデータベースを用いて、虚血性心不全の発症機序に関しての統計解析を推し進めた。その結果、近年の虚血性心不全の増加を明らかとするとともにそこには急性期医療の向上に伴う心筋梗塞急性期の予後改善の結果、生存退院症例の症例背景リスクが増大し、容易に虚血性心不全を発症する要因となっていることを明らかにした。本研究成果は現在論文化を行っており、平成27年度中の公表を目指している。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
BMJ open
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