研究課題/領域番号 |
25461059
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
有川 幹彦 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (20432817)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 生体機能利用 / 心機能保護 / アセチルコリン / 非神経性コリン作動系 / 心筋梗塞 |
研究実績の概要 |
ACh分解酵素阻害剤のひとつであるドネペジルは内在性のAChレベルの上昇を引き起こす。先行研究により、ドネペジルは心筋梗塞モデルマウスにおいて、その急性期に、心破裂による死亡率を低下させて生命予後を改善することが明らかになっている。心筋梗塞病態の急性期には梗塞領域においてマクロファージを含む炎症系細胞による炎症反応が起こる。そこで本研究では、ドネペジルの抗炎症作用について培養マクロファージ細胞を用いて検討を行った。その結果、ドネペジルは、リポ多糖(lipopolysaccharide, LPS)刺激により惹起される炎症反応において、各種の炎症性メディエーターの産生・放出を抑制した。さらには、核内因子(nuclear factor kappa B, NF-kB)のLPS誘発性の核移行を抑制した。これらの結果から、ドネペジルは抗炎症作用を持つことが明らかになった。また、これらのドネペジルの作用は、アセチルコリンでは再現されず、また、アセチルコリン受容体阻害剤存在下においても認められたことから、非神経性コリン作動系を介さないことが明らかになった。さらには、異なるACh分解酵素阻害剤にはドネペジルが示すような抗炎症作用は認められなかったことから、ドネペジル特異な作用であることが明らかになった。これらの結果より、ドネペジルは、急性虚血性心疾患病態において、抗炎症作用を示すことにより心破裂による死亡リスクを軽減させることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金(若手(B))・課題番号(23790858)の補助事業期間を1年間延長したため、本事業の初年度(平成25年度)において、本事業と並行して延長事業も同時に遂行した。そのため、平成25年度に続き、平成26年度においても、本事業の達成度は当初の計画よりやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、平成25年度および26年度以降の研究実施計画に沿って、初代培養心筋細胞および心線維芽細胞を用いて、それらの生理機能に対するAChの効果を、通常培養状態および心不全病態を模した培養状態において検討するとともに、これまでにマクロファージを用いて明らかにしてきたアセチルコリン分解酵素阻害剤の抗炎症作用について動物実験によるin vivo解析を行う。また、非神経性コリン作動系の心筋梗塞病態への関与を検討するための動物実験の予備実験として、モデル作成後に副交感神経活動を記録して各実験群における神経機能を評価し、モデルの有用性を検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本事業の初年度は延長事業が最終年度であったこと、さらには、研究に必要な消耗品等は延長事業と本事業の両事業において共通して使用することができたことから、研究経費を削減することができた。本年度は外国出張や論文投稿などに多額の費用を要したが、僅かに残額が生じたため次年度に繰り越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度は、初代培養細胞単離用動物の購入費、モデル作成用動物の購入費、単離した細胞および細胞株の培養に必要な消耗品(培地、血清、抗生物質、培養器具類)の購入費、分子生物学的解析に必要な各種抗体やRT-PCRキットの購入費、および遺伝子やタンパク質の単離・精製キットなどの購入費としての使用を計画している。繰り越した研究経費はこれらの購入費に割り当てる。
|